殺傷兵器の輸出、また拡大 元防衛相は安堵、学者は批判 次期戦闘機

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田嶋慶彦 パリ=宋光祐 藤原学思=ロンドン 杉山歩
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 日本の次期戦闘機の第三国輸出解禁は、国際共同開発国の英国、イタリアの「外圧」を利用する格好で決まった。ただし、実際の販路があるか不透明なうえ、政府・与党が主張する「歯止め」の実効性にも疑問が持たれている。

 次期戦闘機の第三国輸出に踏み切る理由について、木原稔防衛相は21日の国会審議で「第三国にも移転をできる仕組みを持つことで、同じ土俵に乗れる」と強調した。

 複数の日本政府関係者によれば、日本が今回、輸出解禁に踏み切ったのは、英伊両国からの「外圧」が大きい。

 英伊は共同開発国以外の第三国にも輸出できる一方、日本は防衛装備移転三原則の運用指針に縛られてきた。昨年12月、来日して木原氏と会談したシャップス英国防相は帰国後、日本の指針改定をめぐり、議会で「(日本側に対し)対処する必要があると伝えた」と明らかにした。公明党が昨秋以降、輸出解禁に慎重姿勢に転じると、ある自民党議員は英国政府関係者から「公明党を何とかして欲しい」と求められたという。2月に訪日したメローニ伊首相も次期戦闘機の共同開発を「日本との戦略的協力のカギを握るプロジェクト」と強調した。

 英伊が水面下で日本に輸出解禁を求めていたのは、次期戦闘機の輸出が増えればその分だけ製造コスト抑制につながると考えているためだ。製造数を増やし、単価が下がれば、輸出もまた増える。日本にとってもメリットがある。防衛省幹部によると、日本で機体を組み立てて輸出した場合は利益の「取り分」が増える可能性があるという。

 とはいえ日本自身が英伊の「外圧」を利用した側面もある。そもそも今回の次期戦闘機の輸出解禁は、2022年末改定の国家安全保障戦略(NSS)の方針に基づくものだ。NSSでは武器輸出を「我が国にとって望ましい安全保障環境の創出」などのための「重要な政策的な手段」と位置づけ、安全保障政策を遂行するうえでの重要なツールとみなしている。(田嶋慶彦、パリ=宋光祐)

「歯止め」の実効性に疑問

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 「これで日本から戦闘機が輸…

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    せやろがいおじさん
    (お笑い芸人・YouTuber)
    2024年3月28日19時24分 投稿
    【視点】

    こうして、少しづつ少しづつ、平和国家の形が侵食されていくのだなと感じる。殺傷兵器の輸出を拡大しながら「平和国家としての基本理念を引き続き堅持する」ことなんてできるのか。「体重を増やしつつ、痩せていきたいと思います」ぐらい矛盾している。こんな

    …続きを読む