ソーシャルメディアに米国で広がる警戒感 もっと楽しい場所はどこに

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ミッシェル・ゴールドバーグ/The New York Times 翻訳=城俊雄/朝日新聞
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The Internet Is a Wasteland, So Give Kids Better Places to Go

 筆者は今年1月、リンゼー・グラム米上院議員の発言にうんうんと相づちを打つという不思議な経験をした。この人の言うことはたいがい間違っていると感じているのだが、グラム氏が、ソーシャルメディアの若者への影響についての上院公聴会で、フェイスブック(FB)の親会社メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)に対し、同社製品の子どもへの影響を指摘して「あなたの手は血で汚れている」と厳しく批判したからだ。

 その日の夜、私はソーシャルメディア規制をテーマにした座談会の司会を務めた。参加者にはニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官もいた。彼女は進歩派の闘士で、おそらくトランプ前大統領の最も強力な敵対者だ。ジェームズ氏の意見は、米南部のサウスカロライナ州選出の共和党員であるグラム氏とさほど変わらなかった。中毒性があるソーシャルメディアのアルゴリズムの氾濫(はんらん)と、うつ病の増加や自殺願望、自傷行為といった若者のメンタルヘルスの崩壊との間には、相関関係があると彼女は指摘した。

 「私自身、それを目の当たりにしてきた」というジェームズ氏は、新型コロナパンデミックの最中に精神科の限られた入院病床を見つけるのに苦労していた少女の家族を支援したことを振り返った。「その少女は私にソーシャルメディアについてたくさん語ってくれました」

 ソーシャルメディアが子どもたちに与える悪影響への警戒感は広範かつ超党派的に広がっており、社会心理学者のジョナサン・ハイト氏の注目の新著「不安な世代:いかに子ども時代の思考回路の大きな再配線が精神疾患の蔓延(まんえん)を引き起こしているか」は多くの人にすんなり受け入れられている。子どもたちのエネルギーと注意力が現実の世界からバーチャルな世界へシフトしている、とハイト氏は指摘する。それは特に少女たちにとって破滅的なのだという。

 スマートフォンの登場前から女性の思春期は悪夢と言えるほど十分につらいものだったが、インスタグラムやTikTokなどのアプリによって人気争い、そして、美の基準の非現実さに拍車が掛かっている(対照的に、少年たちはゲームやポルノに熱中し過ぎるという問題をより多く抱えている)。子どもとスマホに関する懸念が、ラジオや漫画、テレビに対して古い世代が抱いた心配の単なる現代版に過ぎないという考えは、ハイト氏が引用したり、反証したりしている調査研究によって正当性を失うべきだ。

ソーシャルメディアが若者に与える悪影響について、米国では警戒感が広がり、さまざまな議論が起きています。どうするべきなのか。NYTの記事後半では、この記事の筆者の提案が紹介されています。

 とはいえ、多くの読者はすで…

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    松谷創一郎
    (ジャーナリスト)
    2024年4月3日3時48分 投稿
    【解説】

    いまアメリカではSNS企業に対する訴訟がさまざまに起こっています。そこで主な対象となっているのは、FacebookやInstagramを運営するメタ社です。それらは若者のメンタルヘルスに対しての悪影響を訴訟理由としており、その原告はアメリカ

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