奈良の鹿、駆除可能エリア拡大へ 生け捕り・終生飼育から方針転換

机美鈴
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 国の天然記念物である「奈良のシカ」をめぐり、奈良県は25日、駆除できるエリアの拡大を検討する方針を決めた。農作物の食害を防ぐため、生け捕りにされた鹿は奈良公園奈良市)の柵内で終生飼育されてきたが、このあり方も見直す。柵内では過密や衰弱など、飼育状況の問題が指摘されていた。

 奈良の鹿は古来より春日大社の「神鹿(しんろく)」として保護され、1957年に旧奈良市一円に生息する鹿は天然記念物に指定された。

 県は鹿との共生を掲げ、春日大社のある奈良公園周辺を「保護地区」とする一方、食害対策として、公園から一定の距離がある「管理地区」では年180頭を上限に駆除してきた。さらに、保護地区と管理地区の間にある「緩衝地区」では駆除せず、生け捕りにとどめてきた経緯がある。

 この緩衝地区について、この日、有識者らを交えた検討委員会が県庁であり、村上興正委員長が殺処分を含めた駆除の方針を示した。委員たちは来春を念頭に、駆除の条件や基準を今後1年かけて検討していくことで合意した。

 これまで、生け捕りにされた緩衝地区の鹿は奈良公園にある「特別柵」に収容され、一般財団法人「奈良の鹿愛護会」が死ぬまで世話をしてきた。現在の飼育頭数は約270頭に上る。村上委員長は「野生の鹿を終生飼育するあり方は見直すべきだ」と話した。

 この問題では、同会の獣医師が昨夏、「えさが十分に行き渡らず衰弱死が相次いでいる」と告発。市と県が調査し、過密ぶりなど飼育状況に不適切な点があったとしていた。県は飼育の改善を指導する一方、山下真知事は昨年末、収容数を減らすため「駆除の範囲を広げざるを得ない」との考えを示していた。

 柵内での鹿の衰弱への告発から始まった問題は、鹿の駆除エリアの拡大方針に展開した。村上委員長は「丁寧に説明すれば市民の理解は得られると思う」と話した。(机美鈴)

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