育てた野菜で弁当作り「心の持ち方」練習 依存症からの立ち直り支援

高木文子
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 薬物やアルコールなどの依存症から立ち直ろうとする人を受け入れる福祉事業所「そらまめ」が、岐阜県各務原市にできた。自然農法で野菜を育てて弁当をつくり、販売している。今後は利用者を増やし、地域とのつながりも深めたいという。

 2月下旬の午後。事業所の調理場には、市内の畑でとれたばかりの土付きのニンジンやキクイモが並んだ。スタッフが寄り添い、利用者が洗って細かく刻んでいく。翌日の弁当用のきんぴらにするという。

 利用者の40代女性は「弁当に具がぜんぶ入って完成すると、毎日うれしい」と顔をほころばす。「ここでは、仕事と、自分の心の持ち方を練習している」

 事業所は昨年10月、薬物依存などからの立ち直りを支援するNPO法人「岐阜ダルク」(岐阜市)が立ち上げた。一般企業で働くことが難しい人らが対象の「就労継続支援B型事業所」で、今は40~50代の男女3人が利用している。薬物やアルコールへ依存した経験があり、生きづらさも抱えるという人たちだ。仕事に就いてもうまくいかず引きこもった人もいる。

 利用者は午前中に畑仕事や調理をして、午後は1時間ほど仲間やスタッフとともにミーティングに臨む。自分の過去や今の気持ちをありのままに語り、回復に向けて仲間と経験を共有する。

「顔が見えるつながり」増やしたい

 依存症の人向けには、岐阜ダルクも生活訓練のプログラムを設けている。ただ、利用は3年まで。依存症のほかに統合失調症などの精神疾患や発達障害があると、訓練後にすぐ働くのが難しいケースもあるという。「いくつも病気を抱える方に居場所をつくり、就労前に練習をしてもらえたら」。岐阜ダルクの遠山香施設長(59)は事業所を立ち上げた理由をこう話す。

 地域で活動への理解を広げることも課題だ。岐阜ダルクが県内に設立されて今年で20年になるが、「活動への偏見は多い」と遠山さん。県内で新施設の立ち上げが難航したり、依存症の当事者がほかの福祉サービスの事業所から利用を敬遠されたり。「依存症の人は怖いというイメージを、払拭(ふっしょく)したい。地域で『顔が見えるつながり』を増やし、独り暮らしのお年寄りの見守りなどもできれば」

 弁当は平日に日替わりで30個ほど作り、主に岐阜ダルクの支援者らに販売している。今後は様々な依存症の人を利用者として受け入れ、運営を安定させたいという。併設のカフェを開く夢もある。

 弁当は予約制で1個500円。問い合わせは、そらまめ(058・227・0435)へ。(高木文子)

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