第8回だから、あなたもだまされます 詐欺見抜けない理由 心理学者に聞く

 「私は、だまされない」。記者(28)の祖母(81)はそう思っていましたが、昨夏、特殊詐欺の被害に遭いました。被害額は100万円。特殊詐欺のニュースを見ながら「なんで、あんな詐欺に引っかかってしまうのか」と首をかしげる人も多いのではないでしょうか。被害者心理に詳しい立正大学心理学部の西田公昭教授(社会心理学)に解説してもらいました。

 ――高齢者が被害に遭いやすいと言われます。年齢とともに認知機能が低下することと関係がありますか。

 完全な勘違いです。家族の危機を察知し、時には銀行の制止を振り切ってまでお金を渡す。これは認知機能がしっかりしていないとできない。実際、働き盛りや若者、いろいろな世代が巻き込まれているんです。

 ――実際にオレオレ詐欺の被害に遭った人の8割近くが、「自分は被害に遭わないと思っていた」と答えたという調査結果もあります。

 警戒できていないわけだから、だまされやすいのは当然ですよね。「私はだまされない」と思って、無防備になってしまっている。自分の弱さを知らない「脆弱(ぜいじゃく)性の無知」と言うんですけどね。自分が弱い、もろい、だまされやすいと分かっていないから、誰かが被害に遭ったと報道されても「ひとごと」としか思っていない。だから、無警戒なんです。

 ――なぜ人は「自分は大丈夫」と思い込んでしまうのでしょうか。 

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 非現実的楽観主義といって…

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    インベカヲリ★
    (写真家・ノンフィクションライター)
    2024年4月10日17時26分 投稿
    【視点】

    特殊詐欺というと高齢者ばかりを思い浮かべてしまうけど、最近は年齢関係なく似たような詐欺が横行しているようで、私の周りでも40代くらいの人から立て続けに詐欺に遭った話をきかされた。うち一人はかなり高額だったようで、手口にしても疑うのが難しいよ

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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2024年4月6日11時0分 投稿
    【視点】

    人の業のようなものについて考えさせられるインタビューでした。 自分事で恐縮です。いまは亡き祖母が、生前、詐欺まがいの悪徳商法に引っかかってしまいそうになったことがありました。要は、その販売業者を完全に信じてしまったわけです。途中で家族が「

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