西郷隆盛の書簡、1世紀ぶり再発見 大久保宛て、写真嫌い示す記述も
西郷隆盛が、岩倉使節団の副使として訪米中の大久保利通に送った自筆の書簡が、約100年ぶりに見つかった。滋賀県が22日発表した。明治5(1872)年、「留守政府」の首班だった西郷が国内状況を報告した一級史料で、その存在は知られていたが、所在がわからなくなっていた。
全長約4・75メートルの巻物で、県文化財保護課によると西郷の手紙の中では最長級。昨年9月、大津市の男性が県立琵琶湖文化館に寄託した文化財に含まれていた。
書簡では、「肥前之佐賀が少々動揺い多し」「四国辺は少々すゝ沸騰も」など前年の廃藩置県後の国内の不穏な状況や、島津家の動向などについて報告している。追伸には、大久保が送ってきた肖像写真に対し「如何(いか)にも醜体」と記すなど、写真嫌いの西郷を象徴する有名な一文もある。
昭和2(1927)年刊行の「大西郷全集」で紹介されているが、その後原本は所在不明に。今回、西郷の弟・従道の「真筆に疑ない」とする鑑定書と、原本が京都の政治家から滋賀県知事の服部岩吉へ寄贈されたとする内容の書簡も見つかった。
県立琵琶湖文化館の井上優副館長は「フォーマルな内容だけでなく、大久保との仲の良さを前提としたくだけた部分もある」と話す。西郷南洲顕彰会の高柳毅専門委員は「まごうことなき自筆書簡。筋が通り、均一の行間で書かれるなど、筆跡の特徴があらわれている。まさか、今に実物が出てくるとは驚いた」としている。
5月27日から9月26日まで、県公文書館で特別公開展示される。