マンション乱立「地方都市死なせる恐れ」 JINS創業者がめざす街
歴史ある建物がなくなり、マンションや駐車場になっていく。マンションはより良い眺望を求めて、高層化していく。そうした変化とともに、まちの個性が失われていく。そんな状況に疑問を持ち、出身地の前橋市でまちづくりに取り組む大手眼鏡チェーン「JINS」創業者の田中仁さん(61)に、魅力的なまちについて聞きました。
信用金庫勤務などを経て「JINS」を創業した田中さん。地元の起業家育成に情熱を注ぐ中で、故郷のまちの衰退に直面しました。まちづくりに取り組むなか、民間主導の大切さを実感したといいます。
地方の魅力は空の広さ
まちを構成する建物のありようはとても大事で、気をつけないと地方都市が死んでしまう恐れがあります。
地方の大きな魅力は空が広いことですが、地方都市が東京のような開発をし、従来持っていた良さが失われるケースが多い。
よくあるのは、新幹線の駅周辺からマンション開発が入り、どこも同じようなまちになってしまうケースです。
マンションディベロッパーは経済合理性を求め、容積率や建ぺい率いっぱいに建物をつくります。その結果、同じようなビルがにょきにょきと建つ。
これが本当に魅力的なのかどうか。
私が前橋でまちづくりにかかわるようになったきっかけが、まさにそこでした。
2013~14年ごろ、地域の起業家を育てるための取り組みを始めましたが、そのころに出会ったまちづくりに関わる若者たちから、相談が寄せられました。
まちの真ん中にある「白井屋旅館」という300年の歴史ある旅館がマンションディベロッパーに売られそうだと。もしあそこにマンションができてしまったら、衰退しているまちが、またどんどんつまらなくなる。何とかなりませんか。そんな相談でした。
マンションが悪いわけじゃありません。
ただ、そこにマンションが建つと、地域の人たちが「つまらない」と感じたのです。
マンションは、住む人はいても開かれた場所ではなく、コミュニティーや交流が生まれるわけではない。
閉じた物がどんどん生まれると、地域が触発される場がなくなります。
そこで旅館を買い取ってホテルに再生したのが、私がまちづくりにかかわるようになったきっかけです。
自分たちのまちは自分たちで…の気概
景観も含めてまちを育てよう…