津波で亡くなった姉と兄から受け継いだ名前 感謝を胸に小学校卒業

滝口信之
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 福島県内の多くの小学校が卒業式を迎えた22日。東日本大震災の津波で姉と兄を亡くした南相馬市の小学6年生の女子児童も卒業を迎えた。震災半年後に生まれ、名前は姉と兄の漢字から1文字ずつもらった。この日、会ったことがない2人へ感謝の手紙を送った。

 上野倖吏生(さりい)さん(12)。南相馬市原町区の大甕小学校を卒業した。式で卒業証書を受け取ると、母・貴保さん(47)と父・敬幸さん(51)の元に歩み寄り、「いつもありがとう」と感謝の言葉を伝えた。敬幸さんの目から涙がこぼれた。

 2011年の震災による津波で姉の永吏可(えりか)さん(当時8)と兄の倖太郎(こうたろう)さん(当時3)、祖父母が犠牲になった。その年の9月に生まれた倖吏生さんは、姉と兄から1文字ずつもらい、敬幸さんの「長生きしてほしい」という願いを込めた「生」を加えて、この名前をつけてもらった。

 毎朝、起きると2人の遺影に声を掛けるのが習慣だ。2人と同じように外遊びが大好き。習字が得意だった姉に追いつこうと一生懸命、練習に励んだ。

 卒業式を控え、授業で「感謝を伝える手紙を書きましょう」という課題が出された。真っ先に思い浮かべたのは、永吏可さんと倖太郎さんのことだった。

 「2人に感謝を伝えたかった」という倖吏生さんは、手紙にこうつづった。

 「お兄ちゃん お姉ちゃん いつも見守ってくれてありがとう お兄ちゃんとお姉ちゃんの分も頑張って生きて 勉強も頑張るから たくさん応援してね」

 卒業式から帰宅後、倖吏生さんは手紙と卒業証書を2人の遺影の前に飾り、小学校卒業を報告した。「中学校では定期テストで100点を取れるように頑張りたい」と誓った。手紙を読んだ敬幸さんは「立派に成長したな」と目を細めた。(滝口信之)

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