初出動でお手柄 警察犬に感謝状 行方不明のお年寄りを発見

野口駿
[PR]

 行方不明になっていたお年寄りを発見したのは、初出動した民間の警察犬だった――。これまで出動機会に恵まれなかったが、指導士と毎日訓練を積み重ね、成果を存分に発揮した。

 2月15日午前9時5分ごろ、埼玉県春日部市の住民から、同居の80代女性について「自宅からいなくなった」と110番通報があった。

 こうした場合、警察は警察官や鑑識課が飼育する「直轄警察犬」を動員し、地元の消防団員らと行方を捜す。直轄警察犬がほかの現場に出ているなどしていた場合、厳しいテストをパスした民間の「嘱託警察犬」などに協力を求める。

 この日は午前10時ごろ、民間の警察犬指導士、里川ひろみさん(58)のもとに出動要請が来た。相棒で、出動経験のないオスのジャーマンシェパード「ロードⅡ フォン ミナト ツネイシ号」(6)の出番だ。すぐに女性の自宅に向かった。

 女性の靴のにおいを嗅がせ、捜索を始めた。風が強く、ロードⅡは自信がない様子だった。ただ、諦めることなく捜索を続けた。

 活動を始めて約1時間後だった。女性の自宅から約800メートルの路上で、ロードⅡが1人の人物を凝視した。服装などが捜索中の女性と一致していた。女性は自宅への帰り道がわからず、途方に暮れていた。

 警察官が確認したところ、女性は無傷だった。女性は「見つけてくれてありがとう」と、ロードⅡの頭を何度もなでたという。

 ロードⅡは生後10カ月で広島県から行田市の小楠(おぐす)真由美さん(61)の元にやってきた。小楠さんは大好きな犬を所有することで社会貢献したいと考え、約20年前から嘱託犬の所有を続けている。ロードⅡは普段は里川さんの訓練施設に預けており、食費や訓練費として毎月約10万円支払う。

 ロードⅡの血統は嗅覚(きゅうかく)を通じた「追跡能力」に優れており、代々優秀な警察犬を輩出してきた。ロードⅡは3年前に県警の厳しい試験を突破して嘱託犬になったが、出動機会がなかった。それでも連日、里川さんと訓練に励んできた。

 埼玉県警春日部署は8日、里川さんと小楠さんに感謝状、ロードⅡにおやつを贈った。小楠さんは「お金も時間もたっぷりかかっているが、地域の皆さまのお役に立てたことが本当にうれしい」。里川さんは「また出動要請があれば、役に立てるように練習を続けていきたい」と話した。(野口駿)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません