中学教科書にデジタル教材急増 でも厳格なチェックなし 浮かぶ課題
2025年春から使われる中学校教科書の検定結果が公表された。出版各社は教科書のQRコードを読み取って閲覧するデジタル教材を大幅に増やした。背景にはデジタル教材の数がシェアに響きかねない実態がある。教員からは歓迎の声も上がるが、国による質のチェックには限界があり、検定制度の課題も垣間見える。
前回検定時は1千個→今回8千個の社も
教科書最大手の東京書籍は今回の検定に申請した8教科で、デジタル教材の数を前回検定時(2019年度)の計1014個から8倍以上の計8776個に増やした。
このうち数学は、前回の約34倍となる1752個。用意された記号や数字を選んで証明問題を解く「証明メーカー」などを新設、生徒が図形やグラフを操作できるツールを増やした。道徳では防災教育の一環で、水害による街の浸水を疑似体験できるVR(仮想現実)動画を新たに作った。
光村図書出版も前回の計880個から計1819個に倍増させた。英語では動画を前回の約7倍に増やし、米国以外の様々な国の人も登場させ、多様な英語に触れられるようにした。
教育出版も前回の計919個から計1800個に倍増させた。社会では生徒が自ら取り組める選択式のクイズや生徒が入力できる設問も作成した。担当者は「授業中に先生がやらせてみることも、自宅学習で使うこともできる。採点も簡単」と話す。
教科書に掲載されるQRコードの数も増えた。文部科学省によると、中学1年生の英語では、前回検定時は6社の教科書で計約300カ所だったが、今回は同じ6社で計約500カ所になった。
教科書会社がデジタル教材を増やすわけ
各社がデジタル教材を大幅に…
- 【視点】
国による教科書検定制度自体が限界にきているのではないか。以前から教科書以外の資料集などは検定の対象外だったし、それがデジタル化したからといって問題の根本が変わったわけではないと思う。情報も価値観も多様化している現在、国による検定なら信頼でき
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