自作の復興記録冊子を改訂 元記者の気仙沼市議

山浦正敬
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 宮城県気仙沼市議の今川悟さん(48)が、議員と元新聞記者と双方の目で復興を検証した記録誌「海と生きる気仙沼の学べる復興ガイド」の改訂版を自費出版した。震災10年に向けてまとめた初版からの3年間の進展を加えた。能登半島地震を意識し、伝えたい復興の課題も紹介している。

 今川さんは震災時は地域紙・三陸新報の記者だった。その後、市議に転進して3期目。復興に向けた現場の実情を市議として独自に報告した内容を2020年夏、まとめた。その後、市内のハード面の復興がほぼ終わり、改訂版を出すことにした。

 当初は、震災の記憶や体験のない地元の若い世代へ、復興の実情を伝えるのを目的とした。編集中に、能登半島地震が起き、急きょ能登の被災地にも伝えたい内容を加えた。A4判62ページで、初版より16ページ増やした。公的な記録と自ら集めたデータで13年間の復興の道のりを分析・検証した。図表を多用し、写真は自ら撮影した。

 能登の被災地でも課題となる住宅再建では、防災集団移転をめぐって行政も被災者も試行錯誤を繰り返した経緯を紹介する。

 市南部の小泉地区を例に、計画から完成までの間、区画数が95から65に縮小されるなどした流れを解説。被災者の希望が時間とともに減ったことが理由で、空き区画の一部は一般公募されたものの埋まりきらなかったとし、「苦労が多かった」とした。

 28地区に計2087戸を整備した災害公営住宅についても新たに特集した。国や市の補助を受けた減免期間と減免後の家賃を比較するなどの実情を一覧表で示した。高齢者の多い入居者に配慮した内装の工夫も例示した。

 住民の支援に奔走した市職員が教訓として残した言葉も加えた。市の対応記録集から抜粋した延べ40人分で、被災者に向き合った際の苦悩や対応の工夫、被災者から聞いた印象的な言葉などを列記した。

 今川さんは「これから復興に向かう能登半島地震の被災地に、あらためて震災の被災地から教訓を伝えていく必要性が増した。冊子が少しでも参考になればと思う」と話す。

 1500部発行し、1冊税込み500円。自らも語り部を務める震災遺構・伝承館や市観光協会(観光サービスセンター)、市内の書店で販売する。今川さんのホームページに購入案内がある。電話の問い合わせは今川さん(090・1883・0108)。(山浦正敬)

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