第2回心臓ばくばく、受け取った紙袋 誕生日会の2日後、大学生は留置場に

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木下広大

 ふと、自分のおばあちゃんが浮かんだ。少し年上かなと思った。

 だだっ広いドラッグストアの駐車場。

 やってきた紫色の車から、高齢の女性が降りてくる。手には白い紙袋。

 あの人だ。

 片耳につけたイヤホンから男の声が聞こえる。

 「向かってください」

 もしかしたら、これってやばいことなんじゃないか。疑う気持ちにふたをして歩き出し、声をかけた。

 「書類を受け取りに来ました」

特殊詐欺の被害に遭ったのは、記者(28)の祖母(81)でした。連載の第2回と第3回は、「受け子」として逮捕された21歳男性への保釈後の取材をもとに描きます。

 1カ月ほど前、学校終わりに自宅でくつろいでいるときだった。

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 大学生のトモヤ(仮名、21)は、同じクラスの山本(仮名)から突然、LINEでこんな誘いを受けた。

 山本は、クラスの中心人物の一人。いつも周りに友人がいる。

 知り合ったのは大学に入ってから。特別仲が良かったわけではない。ただ、帰る方向が同じだったこともあって、時々たわいもない話をしながら一緒に帰ったり、食事したりすることもあった。

 突然の誘い。怪しいとは思った。

 お金に困っているわけではな…

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この記事を書いた人
木下広大
コンテンツ編成本部
専門・関心分野
ドキュメンタリー制作、ポッドキャスト

連載息子さんを逮捕しました 特殊詐欺と二つの家族(全10回)

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