火を使わなくても爆発、なぜ? 化学の定説覆した高校生2人が米国へ

村上剛

 よく知られた化学実験の定説に疑問を持ち、新たな説を示した仙台三高(仙台市宮城野区)の生徒が、5月、米国で開かれる国際大会で、成果を発表する。

 研究したのは、1年の大場誠也さんと志田京太郎さん。自然科学部に入部し、火であぶった白金の箔(はく)に水素ガスが吹き付けられると、爆発的に燃える実験を見て驚いた。2人は「水素に火などのエネルギーを与えていないのに、なぜ爆発するのか興味を持った」と振り返る。

 この現象はこれまで、白金の触媒作用で、箔の表面についていた酸素原子が水素原子と反応し爆発するためとされてきた。しかし、条件を変えて実験を繰り返すうちに、疑問を持った。箔を重ねて厚みが増すと、爆発が起こらなかったからだ。定説通りであれば、厚さは関係がないはず。表面だけでなく、裏面も関係しているのではないか――。試しに裏面にセロハンテープを貼ると、爆発は起こらなかった。

 分析を進め、箔の裏側にある酸素が、箔に開いた小さな穴を表側に通り抜ける時に触媒作用が起き、定着した酸素原子と水素原子が反応し爆発することを明らかにした。

 この成果は昨年、自由研究のコンテスト「JSEC(高校生・高専生科学技術チャレンジ)」(朝日新聞社・テレビ朝日主催)で高く評価され、特別協賛社賞の「花王賞」を受賞した。

 2月21日、花王の山田泰司・研究開発部門研究戦略・企画部上席主任研究員らが同校を訪ね、賞状を贈った。山田さんは「定説をうのみにせず自分たちで仮説を立て、実験し検証した。方法もユニークでよく考えられている」とたたえた。2人は「研究をより発展させ、触媒反応を効率化し、白金の使用量軽減を目指したい」と語った。実験では、箔が柔らかくて形が不安定なことや、ハサミで切る時の静電気に悩まされたという。

 2人は5月、米国・ロサンゼルスで開催される国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として挑戦する。ISEFは、例年60カ国以上から高校生ら千数百人が集う世界最大級の大会だ。2人は「この研究を世界で知られるものにしていきたい。似た研究をしている海外の高校生との情報交換にも期待している」と意気込んでいる。(村上剛)…

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