森元首相の証人喚問めぐり、野党に温度差 安倍派ら6人要求で一致も

伊沢健司
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 自民党派閥の裏金事件をめぐり、立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の野党4党の国会対策委員長は19日、国会内で会談し、安倍派幹部ら衆院議員6人の証人喚問を要求することで合意した。政治倫理審査会では実態解明に至らず、偽証罪に問われる証人喚問が必要と判断した。

 対象はいずれも同派の事務総長経験者である西村康稔前経済産業相、松野博一官房長官高木毅前党国会対策委員長、下村博文元文部科学相のほか、同派座長の塩谷立元文科相、池田佳隆氏=政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で起訴、自民除名=の計6人。

 池田氏以外の5人は18日までに政倫審で弁明したが自らの関与を否定。裏金作りの経緯も「わからない」と繰り返し、証言の食い違いもあった。

 立憲の安住淳国対委員長は19日、記者団に「(5人は)保身に終始し、実態の解明を妨げる発言を繰り返した」と批判。そのうえで「政倫審では壁があることははっきりした。ステージを上げた要求をして、実態解明に野党結束して努めていきたい」と述べた。

 だが、証人喚問の開催は予算委員会委員の全会一致が慣例だ。実現には与党の協力が必要となるが、自民の浜田靖一国対委員長は「かなりハードルの高い話だ」と述べ、否定的な考えを示した。

 また、野党4党はこの日、裏金作りが判明している残り45人の自民衆院議員の出席を求める「申し立て」を目指すことでも一致した。申し立てには、政倫審委員の3分の1以上の賛同が必要。衆院では、野党側の8人では1人足りないため公明党に協力を求めた。週内にも政倫審の会合を開き、申し立ての手続きをしたい考えだ。

 安住氏から要請を受けた公明の佐藤茂樹国対委員長は、記者団に「我が党独自として回答しようがない。党幹部とも相談しながら対応したい」と述べるにとどめた。安住氏は自民側にも同様に要請した。

 証人喚問をめぐっては、安倍派会長を長く務めた森喜朗元首相も対象とするかどうかで野党内の見解が割れた。

 この日の野党国対委員長会談では、共産の穀田恵二国対委員長は「裏金作りの発端に介在しているのは森氏だ」として、森氏の証人喚問を提案。これに対し、安住氏らはまず自民が森氏から聞き取り調査をし、4月の予算委で報告させるのが先決だとし、今回は対象から除外したという。

立憲・安住氏「民間人だから…」

 安住氏は会談後、「(森氏は)民間人だから、いきなり国会に呼ぶのは簡単ではない。順序立ててやる。乱暴に何でも呼べばいいという話ではない」と説明。維新の遠藤敬国対委員長も「森さんを証人に呼ぶのは非常になかなかハードルが高い。(西村氏ら安倍派幹部の)5人の証人喚問ができなければ、森さんを呼ぶことは不可能だと思う」と話した。

 森氏は1998年~2006年、首相在任中を除いて同派で会長を務めた。塩谷氏は1日の衆院政倫審で「(組織的な裏金作りは)二十数年前から始まったのではないか」と説明。森氏が会長だった時期と重なることから、森氏からの聞き取りが欠かせないとの声が自民内からも出ていた。

 また、朝日新聞の世論調査(16、17両日実施)でも、森氏を国会に呼んで説明を求める「必要がある」が65%、「必要はない」が26%。現時点で森氏を証人喚問の対象としないという安住氏らの判断には、「森氏に甘い」(共産関係者)と指摘する声もある。

 そもそも自民の聞き取り調査が、本当に実施されるかどうかは不透明だ。岸田文雄首相は15日の参院予算委で、18日の下村氏の政倫審を踏まえたうえで、必要に応じて聴取すると答弁したが、下村氏からは具体的な証言は出ていないからだ。

 森氏に近い自民の閣僚経験者は予防線を張る。「下村さんから森さんの名前が出なかった以上、森さんをはじめ、歴代清和会長から聞き取り調査をするというのは根拠がなくなったよな」(伊沢健司)

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