多賀城碑が国宝指定へ、文化審答申、創建1300年伝える貴重な資料

中島嘉克
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 2024年は多賀城創建から1300年を迎える記念の年。その唯一の根拠とされる「多賀城碑」が国宝に指定される見通しになった。碑面に記された内容の重要性が評価され、古文書として県内で初めての国宝指定となる。宮城県内の国宝指定は23年ぶりで、7件目。

 国の文化審議会が15日、文部科学相に答申した。多賀城碑は特別史跡「多賀城跡」(多賀城市市川)にある石碑。日本三古碑の一つで、江戸時代には松尾芭蕉が訪れ、感激して対面した様子が「奥の細道」に記されているという。

 多賀城碑は地上高196センチで幅103センチ。碑面には141字の文字が彫られている。神亀元年(724年)に大野東人が多賀城を創建したことや、多賀城の改修を記念して天平宝字6年(762年)に碑が建立されたことなどを伝える内容だ。

 多賀城市埋蔵文化財調査センターによると、多賀城碑にはかつて偽物説があったという。その後、1980年代終わりから90年代にかけて検証が進んだことで本物だということが通説となり、98年に国の重要文化財に指定された。

 同センターによると、碑に記された多賀城の創建などの情報は、当時の国の公式記録である「六国史(りっこくし)」にも記載がない。「奈良時代に書かれた内容をそのまま現代に伝える史料として、多賀城と古代東北史を解明するうえで、歴史的・学術的に非常に価値が高いことが評価された」と同センターの担当者は説明する。

 多賀城市の深谷晃祐市長は「この1300年という記念すべき年に多賀城碑が国宝に指定されるということは我々市民にとっても大変ありがたいこと。県民のみなさまにとっても喜ばしいことかと思う」と話す。

 県内の国宝指定は23年ぶりとなる。村井嘉浩知事は「このたびの国宝指定が、多賀城の歴史文化の奥深さを改めて再認識する絶好の機会となる。これを機に史跡をPRさせていただき、観光につなげていきたい」と話している。

 国の文化審議会はこのほか、多賀城跡からの出土品など3件を国の重要文化財に指定するよう答申した。(中島嘉克)

県内の国宝

〈建造物〉

・大崎八幡宮

・瑞巌寺本堂(元方丈)

・瑞巌寺庫裏及び廊下

〈書跡典籍〉

・類聚国史巻第廿五

・史記 孝文本紀第十

〈歴史資料〉

・慶長遣欧使節関係資料

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