離婚後の共同親権で、どうなる子どもの医療同意 「急迫の事情」とは

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野口憲太

 離婚後にも父母の双方が親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした民法などの改正案の国会審議が始まった。離婚前に家庭内暴力(DV)や虐待がある場合への対応のほかにも、さまざまな課題も指摘されている。その一つが、医療面での対応だ。

 日本産科婦人科学会や日本小児科学会など4学会は昨年9月、緊急的な医療行為については双方の同意を必要としないことなどを求める要望書を提出した。

 ワクチンをうったり、手術をしたりといった医療行為には、患者の同意が必要となる。

 患者が子どもであれば(多くの場合で15歳未満)、原則として親権者に、医療行為への同意が求められることになる。

 離婚後の共同親権が導入されれば、離婚した父母どちらからも同意を取る必要があることになる。ただ、法改正に向けた法制審議会(法相の諮問機関)の議論では、共同親権とした場合でも、「子の利益のため、急迫の事情がある」ときには、例外的に片方の親だけで親権を行使できるとされている。

 では、どんな医療行為であれば親権者双方の同意が必要で、片方の同意だけでよい「急迫の事情」とは、どんなときか。

 同意を双方からとりつけるために手続きが煩雑になってしまえば、子どもの命を救うのに一刻を争うような事態では、遅れにつながる懸念もある。

 一方、適切な同意の手続きをふまなければ、医療者側が訴えられるリスクもある。

 実際、親権者の同意をめぐって医療機関の対応が問われた事例もある。

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