【東日本大震災13年】「風化させない」 能登の被災地にも祈り

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 東日本大震災の発生から11日で13年。大切な人を失った悲しみや郷里への思いを抱えながら祈りを捧げました。かけがえのない日常と「次」への備えについて考える一日。各地の動きをタイムラインで記録しました。

■■■3月10日■■■

10:30

決壊したダムの犠牲者悼む 福島県須賀川市

 福島県須賀川市では、東日本大震災後に完成した防災公園で「大震災と藤沼湖の記憶をつなぐつどい」があった。

 最大震度6強の揺れに見舞われ、市の西部にある農業用ダム「藤沼湖」が決壊。下流域の集落が約150万トンの濁流にのまれ、行方不明1人を含む8人が犠牲になった。この日はダムのふもとに造られた公園で、遺族や周辺住民らが慰霊碑に献花し、祈りを捧げた。

 祖母を亡くした和智裕子さん(40)は、小学生の子ども3人と参加した。

 13年前の震災では、揺れの後、自宅前の川が急に増水し始めた。上流に藤沼湖があった。車を高台に置いて戻ってくると、自宅は濁流にのまれ近づくことができず、家の中にいた祖母は流されてしまった。

 「祖母を助けられなかった後悔の思いを今も持ち続けている。子どもたちには、万が一の時に自分を守れるすべを身につけさせてやりたい」

11:00

震災と被災地を記録してきた3人が語り合う 仙台市

 せんだいメディアテークでは、震災や被災地をさまざまな形で記録してきた3人の展示が開かれている。この日は3人が集まり、それぞれの記録について話し合った。

 震災前から仙台市の風景写真を撮り続けてきた建築士の高橋親夫さん(76)は、2011年2月の同市荒浜などの写真を、当時の日記とともに展示。雪が積もった浜辺の流木や消波ブロックなど震災前の日常を切り取った。「変化していく世界を誰かが記録しないと、何も残らない」

 自閉症の息子(当時10)と仙台市で被災し、避難所に行けなかった主婦の橋本武美さんは昨年、障がい児の親7人を取材し、震災での苦労を聞いた。「(支援を求めたいと)言いづらい、申し訳ないって思わなくていい世の中になってほしい」といった音声記録やその文字おこしを展示している。「他の地域で災害が起きた時に自分だったらどうするか、考えるきっかけにしてほしい」

 埼玉県の自由の森学園高校の佐野友紀さん(18)は、校外授業で訪れた石巻市での住民インタビューを模造紙にまとめた。「自分が教えてもらうだけでなく、記録として他の人に返すことが重要だと思う」と話した。

13:30

バスケB2の復興祈念試合始まる 試合前に追悼の大合唱 盛岡市

 バスケットボールB2・岩手ビッグブルズの「東日本大震災復興祈念試合」が盛岡タカヤアリーナ(盛岡市)で始まった。対戦相手は、青森ワッツ。ブルズの水野哲志社長によると、選手や社員は「絶対に負けられない日」と胸に刻み、試合に臨む。

 試合に先立ち、県内の中高生ら約230人と観客が「花は咲く」を合唱した。また会場全体で1分間の黙禱(もくとう)をして、追悼した。

 ブルズは震災と同じ2011年にbjリーグ(当時)に参入後、これまで「復興のシンボル」として岩手とともに歩んできた。13年経つ今も、震災で起こったことを忘れないでほしいと、クラブ初の試みとして合唱が企画された。

 同じ対戦相手だった前日9日は95―93で勝ちきった。選手は普段の赤色に代え、祈念試合のための特別な青色のユニホームに身を包み、連勝を目指す。

13:30

ラグビー追悼試合、釜石シーウェイブスが得点 岩手・釜石市

 ラグビー・リーグワンの釜石シーウェイブスの試合が、岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで始まり、シーウェイブスが初得点をあげた。「東日本大震災復興祈念試合」と銘打ち、選手たちは被災地に勇気、元気を与えようと躍動した。

 試合前には、スタジアム外周で、県立釜石高校の有志でつくる震災伝承グループ「夢団」が、各地から来た観戦客に語り部活動をした。

 生徒たちには、震災の記憶がほとんどない。初めて語り部をした1年の森美恵(みさと)さんは「私が話していいのかと葛藤があったが、熱心に聞いてくれたので伝わったと思います」。

14:46

「慣れ親しんだ場所だった」荒浜で手を合わせる 仙台市

 仙台市若林区の荒浜で、村主香織さん(51)らが、午後2時46分の震災発生時刻に、海に向かって手を合わせていた。

 趣味のサーフィンでよくこの周辺の海に来るといい、毎年祈りに訪れている。「慣れ親しんだ場所が津波で一気になくなったことは忘れられない。海に関わっている限り、来年以降もずっと来ると思います」

15:15

ベガルタ仙台、復興祈念試合で勝利 仙台市

 サッカーJ2ベガルタ仙台は10日、本拠地のユアテックスタジアム仙台(仙台市泉区)で東日本大震災復興祈念試合に臨んだ。試合前には選手や観客ら全員で1分間、黙禱(もくとう)した。スタジアムには、1万3179人が来場し、今季のJ2ホーム開幕戦を勝利で飾った。

 対戦相手は水戸ホーリーホック。前半は拮抗(きっこう)した展開が続く。迎えた後半、ホームの大声援を受け、MF郷家友太のパスに抜け出したMF相良竜之介が決勝ゴールを決め、1―0で勝利した。

17:00

「希望の灯火」、かつて街があった丘を照らす 宮城県岩沼市

 宮城県岩沼市の「千年希望の丘」で、追悼行事「希望の灯火(あかり)」があった。かつて地域に住んでいた住民らによって灯籠(とうろう)に火がともされ、公園を照らした。

 市は面積の48%が津波で浸水し、沿岸6地区が大きな被害を受けた。市は「千年先まで子どもたちが笑顔で幸せに暮らせるように」との願いを込め、跡地に緑豊かな公園を造った。震災で生じたがれきを基礎に活用し、津波避難にも使える丘を14カ所整備した。

 この日は慰霊碑の周りに約530個の灯籠が並べられた。灯籠には「忘れない」「未来へ」などの文字が書かれていた。

 行事の冒頭、参加者は能登半島地震の犠牲者に黙禱(もくとう)した。住民が移転した玉浦西地区の「まちづくり住民協議会」の森博会長(74)は「私たちの復興の取り組みが、能登の皆さんにいくばくかの光明のあかりになれば幸いです」と述べた。

18:00

能登半島被災地への思いも込め、イルミネーション点灯 宮城県気仙沼市

 この日で開館5年となった宮城県気仙沼市の震災遺構・伝承館で、翼のはえたハートをかたどったイルミネーションが点灯された。震災の日を示す「3・11」とともに、能登半島地震が発生した元日の「1・1」の文字も添えられた。

 伝承館では約30人の中高生が語り部を務める。ハートは「防災や地域の発展への思いを翼で未来へ届ける」という気持ちを表現した。能登半島の被災地に寄り添う気持ちも込められている。

 準備した気仙沼向洋高校2年の語り部、菅原怜志(れいじ)さん(17)は「明かりを見ながら遺構の伝える戒めや教訓を記憶に残してほしい」と話した。

18:09

避難指示の一部解除から1年半、駅前でキャンドルナイト 福島県双葉町

 東京電力福島第一原発事故で大きな被害を受け、約1年半前に町の一部で避難指示が解除された福島県双葉町で10日、犠牲者への追悼と復興への願いを込めた「ただいま、おかえり 双葉まちキャンドルナイト」があった。

 会場となったJR双葉駅前には、町民や来場者がメッセージを書き込んだキャンドルなど約1千本が並んだ。福島市の小学3年生、北山咲良(さら)さん(8)は「またいっぱい人が集まれるようになったらいいなと思う。みんなで助け合う町になったらいいな」。震災当時、いわき市に住み、原発事故で会津地方に避難した経験を持つ母親の愛美(まなみ)さん(42)は「この子たちは震災を知らない世代。自分たちの経験を伝えて、悲惨な出来事を繰り返さないためにどうしたらいいか話していきたい」と話した。

■■■3月11日■■■

05:54

「当たり前だったものが無くなってしまった日」 仙台市・荒浜

 仙台市若林区荒浜では11日、早朝から海に向かって手を合わせる人の姿が見られた。

 そのうちの一人、仙台市青葉…

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    田渕紫織
    (朝日新聞社会部記者=メディア、子ども)
    2024年3月11日21時16分 投稿
    【視点】

    数年前の3月11日の夜。岩手沿岸で、いつもは繁盛しているスナックががらんとしていました。まばらにいるお客さんは、町外から来た復興工事業者や報道機関の人たち。店主さんが「今日はみんな、それぞれ静かに過ごす日だろうね」とつぶやいていたのを思い出

    …続きを読む