強まる米軍依存、オスプレイ飛行再開へ 防衛省幹部「拒否権はない」

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ワシントン=清宮涼 下司佳代子 田嶋慶彦 加治隼人 仙崎信一 棚橋咲月 小野太郎
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 米軍は8日、鹿児島県屋久島沖で昨年11月末に起きた墜落死亡事故を受けた輸送機オスプレイの飛行停止措置を解除した。日米両政府は事故原因を「特定の部品の不具合」とするが、具体的には明らかにしていない。日米両政府は今後、日本国内における米軍オスプレイの具体的な飛行再開時期を協議する方針だ。

台湾有事にらみ、米軍戦略で増す有用性

 「オスプレイの飛行再開は、(米国の)国益を守る上で極めて重要だ」

 米海軍航空システム司令部は、8日の声明でこう訴えた。軍の作戦を遂行するにあたり、ほかに代替できる機体がないことが背景にある。ヘリコプターと飛行機の特徴を兼ね、有事には船から離陸し、前線部隊に兵力や装備、物資を送るのに不可欠な存在とされる。

 海兵隊、空軍、海軍はそれぞれ独自の計画に沿って飛行を再開する。事故機を運用していた空軍は新たな手順に沿って訓練計画を更新し、パイロットや整備士の習熟度を上げ、数カ月かけて段階的に完全な任務再開をめざすという。

 同司令部によると、1980年に起きた在テヘラン米大使館の人質救出作戦の失敗をきっかけに国防当局内で開発の必要性が強く認識されるようになり、本格的な導入計画が動き出した。2007年に実戦配備され、イラクアフガニスタンでの戦争やハイチ地震の救援など各地で活用されてきた。

 中国が軍事力を増強し、台湾有事への危機感が高まる中、在日米軍にとってもオスプレイの重要性は増している。米海兵隊は中国を念頭に、相手のミサイル射程圏内を移動しながら攻撃する「EABO(遠征前進基地作戦)」を展開する離島即応部隊を昨年、沖縄で発足させた。南西諸島で、小規模で機動力の高い部隊が分散し、移動しながら作戦を遂行。オスプレイはこうした作戦でも活躍が期待されており、訓練でも多用されてきた。

 米軍の戦略に詳しい米ジョンズ・ホプキンス大高等国際関係大学院博士課程のショーン・ハーディング氏は「速度と航続距離、運搬能力に優れた唯一の存在で、有事において非常に重要。南西諸島で、島から島に移動するという地理条件に対応するには完璧な存在だ」と指摘する。

事故多く「空飛ぶ棺おけ」とも

 有用性に優れる一方、事故の…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2024年3月10日5時42分 投稿
    【視点】

    そもそも日本国内での米軍の運用については、日本の主権や国民の人権に関わる問題でありながら、国内法の適用が制限されています。日本政府(外務省)が、「一般国際法上、外国軍には特別の取り決めがない限り、受け入れ国の法律は適用されない」という考え方

    …続きを読む