自立するってこういうこと? 障害「重度」のひかりさんが一人暮らし
下尾ひかりさん(30)は、感情のコントロールや体を動かすことが苦手だ。障害支援区分は「重度」だが、5年前に一人暮らしを始めた。コンビニの店員や駅員らに少しずつ見守られながら。
「冷たい梅ジュースです。ごゆっくり」
1月下旬、ひかりさんはエプロン姿で接客をしていた。
耳には耳障りな音を遮断する大きなイヤーマフ(耳あて)をつけているが、少し曲がった手首でお盆を抱えて器用に配膳もこなす。この日は「ルーロハン500円」という日替わりメニューの看板もかいた。
日中は事業所のカフェで接客
平日の昼間は生活介護事業所「カプカプ川和」(横浜市都筑区)に通っている。ここでは障害を抱える人たちがカフェを開いていて、ひかりさんは厨房(ちゅうぼう)でのカレー作りや接客を担当しているという。
ひかりさんは知的障害やこだわりが強いといった自閉症に近い特徴がある。身体的な障害も併せると、障害支援区分は重度になる。
一人暮らしを始めたきっかけは、障害を抱えながら一人暮らしをする友人宅を訪れたことだった。「私も」と両親を説得して、2019年から始めた。
当初は「30歳までお母さんと一緒にいる」と弱気な一面を見せることもあったが、最近は自信もついた。「ヘルパーさんと映画を見にいった。スターバックスも行くよ」とひかりさん。
自宅マンションからカプカプまでは、市営地下鉄に乗る。市の「福祉特別乗車券」を提示して改札機を通り、ホームや電車の中では友人とおしゃべりをしながら過ごす。
家事や料理は1日2時間来てくれるヘルパーが担っている。ひかりさんは洗濯機を回すことはできるが、細かな手作業が苦手で洗濯物を干すことができない。
ヘルパーと一緒に買い物をして、料理もつくる。「いつか1人でお買い物をしたり、自分でご飯をつくったりできるようになりたい」
「保護しました」連絡を受けた父は
ある日、父親で放送作家の雅美さん(67)のもとに市営地下鉄の駅員から、ひかりさんを保護した、と連絡が来た。
ひかりさんは不安な気持ちを…
- 【解説】
重い障害がある子どもを育てている親の一人として、いつも考えているのは「親亡き後」のことです。 自分たちが死んだ後、我が子はどうやって暮らしていくのだろうか、と。 記事にもありますように、施設から地域へという障害者の「地域移行」は進んでいま
…続きを読む