第1回77歳、初めて並んだ食料配布の列 「まさか自分が…自業自得?」

[PR]

 ワンルームアパートの家賃約6万円が払えなくなり、今の団地に引っ越してきたのは3年ほど前になる。

 築50年ほど。台所、4畳間、6畳間があって家賃は3万円。前の住まいより広くなったが、電気代を浮かせるためにも6畳間しか使わないようにしている。

 寒さの厳しい夜は、背中にカイロを張って重ね着でやりすごす。昨夏は酷暑の夜も、脇に保冷剤をはさんで乗り切った。

 九州出身、77歳。女性は都内でひとり、暮らしている。節約生活を続けてきたが限界を感じ、昨年末、意を決して都庁前を目指した。

 高層ビルに囲まれた広い歩道には、お年寄りも、若い人もいる。男性が多いが、女性も少なくない。どこから来たのだろうか。数百人が並んでいる。NPO法人が主催する生活困窮者向けの支援の場。列に並び、無料の食料を初めて受け取った。

 新聞を読むのが好きで、そうした支援があることは知っていた。世の中には大変な人たちがいるのね。そんなふうにしか考えたことはなかった。

 年金と貯金で十分暮らしていけると思っていた。「まさか自分がこうなるとは」

年金は計9万円、家賃は6万円

 20代半ばから8年ほどは…

この記事は有料記事です。残り1410文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年3月10日14時52分 投稿
    【視点】

    <○○になったのは本人の努力が足りないから>、<○○は自業自得>といった自己責任論を生んでいるのは私たちの社会だ。暮らしを守る法や制度だけでなく、"貧困や孤立といった生活上困難な状況は、人生のあらゆる段階において誰にでも生じ得る"という共通

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    木村司
    (朝日新聞社会部次長=沖縄)
    2024年3月9日12時37分 投稿
    【視点】

    高齢単身女性の貧困率4割――。昨年暮れ、偶然にもこの数字と出会ったときは一瞬、目を疑いました。国際女性デーに向けて取材班をつくり、テーマをさぐり始めたときのことです。貧困といわれて想起するのは、子ども、シングルマザー。もちろん、高齢の方たち

    …続きを読む
Think Gender

Think Gender

男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]