映画「怪物」のあらすじと公開までの経緯

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映画『怪物』のあらすじ

 長野県の小学校で起こったある出来事をきっかけに、母、教師、子どもたち、と視点を変えながら3章で構成される物語。

 小学5年生の麦野湊(黒川想矢)を一人で育てる早織(安藤サクラ)は、息子の様子がおかしいことに気付く。湊は担任教師(永山瑛太)にひどいことを言われて暴力をふるわれた、と打ち明ける。早織は学校に乗り込むが、校長(田中裕子)をはじめ学校の対応には誠意が見られず、担任教師は湊が同級生の星川依里(柊木陽太)をいじめていると言い出す。

 第2章では、子どもと真剣に向き合う担任教師の視点から描かれ、同じ出来事をめぐって異なる一面が見えてくる。

 そして第3章。学校でいじめられ、家では父親に虐待されている依里と湊が次第に親密になっていく。一方、2人は様々な形で押し付けられる社会の“普通”のなかで、自らの感情をどう受け止めていいか、思い悩む。ある嵐の夜、追い込まれた2人は秘密基地だった森の中にある古びた車両に逃げ込む。ラストシーン、車両から抜け出した泥だらけの2人が、草むらを駆け抜けていく。

 物語を通して、クィアな子どもたちを取り巻く大人たちが、自らの無自覚な加害性や暴力性に気付かされていく構成になっている。

公開までの経緯

 映画は2023年、3大映画祭の一つであるフランスカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、上映後の5月18日には現地で記者会見が開かれた。

 海外メディアからの「日本ではLGBTQを扱った映画は少ないのでは」という質問に対して、是枝裕和監督は「少年たちが抱える感情を紋切り型に捉えるのではなく、成長過程に起きる誰もが感じるであろう内的な葛藤、自分でも捉えきれない、言葉にしにくい感情を抱えてしまったときの少年たちの話だと僕自身は捉えました。ただ、制作のプロセスでそういった問題を抱えた子どもたちのケアをされている専門家に相談してレクチャーしていただいたり、プロデューサーと相談しながら出来る限りしたうえで撮影には臨んだつもりです。けれど、そのことに特化した作品という風には自分では思っていませんでした。誰の心の中にでも芽生えるであろう、それが時には他人に暴力的に向いてしまう、もしくは自分自身を食いつぶしてしまう。どういう風にそれを乗り越えていこうとするのか、そういう物語だと思っています」と語った。

 同27日には主要部門の授賞式前に発表される独立賞の一つで、LGBTやクィアを扱った映画に与えられる「クィア・パルム賞」に日本映画として初めて選ばれたことが発表された。さらに、カンヌの主要賞である脚本賞も受賞した。日本では6月2日に劇場公開された。

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