定期便化見送りの福島―台湾路線 昇格の課題は「福島側の需要喚起」

力丸祥子
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 今春に予定されていた航空機の定期便化が見送られた、福島空港と台湾の路線。東日本大震災で途切れた国際定期便の就航は福島県の「悲願」だが、実現へ向けてはさまざまな課題があることが、航空会社などへの取材から見えてくる。

 「どの路線もマーケットの需要に基づいて定期便化するかを決めている」

 運航する台湾の格安航空会社「タイガーエア台湾」に朝日新聞が「定期便化しなかった理由」などを尋ねたところ、2月27日に文書でそう回答した。「なるべく早く定期便化したい」としたが、それには福島側のさらなる利用促進が必要との認識を示した。

 県とタイガーエア、台湾の旅行会社の3者は昨年9月、チャーター便を成功させ、定期便の運航につなげる内容の覚書を締結した。今年1月、福島―桃園国際空港を週2往復する定期チャーター便の就航が始まった。4月以降は定期便に昇格する計画だった。

 だが先月、タイガーエアが4月~10月もこれまでどおり週2往復のチャーター便運航を続ける見通しであることを、県が発表していた。

 県によると、現行の定期チャーター便はすべてツアーでの利用。1月からの搭乗率は9割程度だが、「雪を見たい」という台湾側の需要が高かったことや円安の影響で、台湾からの利用者が日本からの2倍になり、需要のバランスに差が出ている。

 タイガーエアは取材に「長期的かつ安定的な運航には二国間で旅客のバランスがとれた発展が必要。福島から台湾への旅行にもこの路線が選ばれることを期待する」とした。さらに「福島県や地元の観光業界が、この路線の認知度を高め、地元の人々に選んでもらえるようサポートしてほしい」などと、福島側の需要喚起を求めた。

 4月からは一部の座席がツアーではなく、個人でも購入できるようになる。県空港交流課の担当者は「県民に台湾の食や観光の魅力をもっと知っていただけるようPRしたい」。

 県内の観光地の魅力を高め、台湾からの旅客を引きつける必要もありそうだ。近隣には、集客をめぐるライバルも存在するからだ。

 タイガーエアはすでに隣県の仙台空港茨城空港に定期便を就航させている。

 宮城県によると、東北一の繁華街への利便性が良い仙台空港と台湾を結ぶ定期便はタイガーエアを含む計週17往復あるという。

 一方、茨城県によると、2018年3月から、茨城―桃園国際空港を週2往復するチャーター便を経て、同年10月に定期便に昇格。コロナ禍で3年間の運休を挟んだが、23年3月に定期便が再開した。今年4月からは台湾・高雄とのチャーター便も運航予定で、計週5便の定期便化をめざすという。

 戦略的に進める県の担当者は「台湾の方はお花が好き。ネモフィラやコキアで有名なひたち海浜公園はキラーコンテンツ。偕楽園などでも、県内観光を楽しんでもらえている」と話す。

 また、台湾生まれで茨城県育ちのタレント、渡辺直美さんを「台湾いばらき宣伝大使」に任命。百貨店での台湾フェアなど、県民にも台湾を身近に感じ、航空便を利用して旅したくなるよう取り組んできたという。県の担当者は「定期便化には、チャーター便で着実に実績を重ね、需要があることを航空会社に示すことが欠かせない」という。

 福島県観光交流課の担当者によると、台湾からの県内のツアーは大内宿や鶴ケ城、JR只見線など、会津地方に偏りがちという。「定期便化に向け、浜・中・会津と幅広く、四季を通じて魅力があると台湾のみなさんに発信していきたい」と話した。(力丸祥子)

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