第4回「ひっそり死にたい」と願った男性 「ゆうパック」で届けられた遺骨

有料記事身寄りなき最期と向きあう

土肥修一

 だれにも迷惑をかけず、ひっそり死にたい。だから、親族にも連絡しなくていい。

 男性は生前、たびたびそう話していた。

 86歳。病院で亡くなって9日後、関東地方の斎場で火葬された。その場に、親族の姿はひとりもなかった。

 骨だけが、本籍地だった四国地方の親族の元に郵送された。「ゆうパック」だった。

 遺骨を「発送」した関係者によると、遺骨を引き受けてくれる配送手段は、ゆうパックだけなのだという。

 病院に残された記録や、かかわった人の話から、男性の最期をたどる。

 男性は長い間、木造の古い賃貸アパートに1人で暮らしていた。大手自動車メーカーで定年まで勤め、婚姻歴はなかった。

 「ひとりの方が気楽だから」

 「何かあっても覚悟を決めているから。介護保険なんていらない」

 そう話していた。

 2021年6月半ば、肺炎や持病の糖尿病が悪化した。呼吸困難やけいれんを起こし、市内の病院に緊急入院。自分では救急車を呼ぶことができず、アパートの隣人に通報を頼んだという記録が残っている。

 入院時、手持ちの現金はなかった。数日して、系列の病院に移った。最初の医療費は支払われないままだった。

 転院先の病院で、看護師が尋ねた。

 だれか、医療費の支払いや金…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年3月7日11時0分 投稿
    【視点】

    頼れる身寄りがいても、いなくても。一人でも。「自分が死んだあと、迷惑をかけたくない」という思いからくる将来への不安を抱いている方が多いとすれば、社会が変わる必要があると思う。頼れる身寄りがいない人が増えているにもかかわらず、今後も増えていく

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2024年3月7日23時41分 投稿
    【視点】

    誰もが迎える死。本人が望む望まないにかかわらず、「ひっそりと」死ぬことはできないのだと考えさせられる記事です。 我が家では、コロナによる緊急事態宣言が出た2020年から継続して断捨離中なのですが、「ときめき」を通り越し、「死んだらゴミ

    …続きを読む