スマホでもAIでもない「人が発明すべきもの」 富野由悠季の答えは

有料記事テクノロジーの未来を語る 富野由悠季の視点

聞き手・市野塊 竹野内崇宏

 ドローンやSNSの発展で、戦争の様子が世界中に瞬時に伝送される時代。「機動戦士ガンダム」などを手がけてきた映画監督・原作者の富野由悠季(よしゆき)さん(82)は、むしろ「リアルが見えなくなっている」と危機感を抱いているといいます。

 ――富野さん自身、絵を描くことはありますか。

 漫画は鉄腕アトムだけ好きで、中学の3年間は「手塚治虫を追い越そう。漫画の絵じゃなくリアリズム(路線)で行くぞ」と頑張ってペン画を毎日練習しました。でもプロ並みの線が描ける同級生もいて、自分は諦めたんです。

 大学卒業後に、手塚のプロダクション「虫プロ」に潜り込めました。入ってすぐ、絵コンテを描かなくちゃいけない場面で、鉛筆で描けたのは、ペン画の練習でアニメ制作レベルの作画力がついていたからでしょう。

 ――リアリズムを追求したガンダムの最初の放映から今年で45年。映像や通信技術が向上し、ドローンやSNSによってリアルな戦争の様子も世界中に伝わるようになりました。

 スマートフォンやSNSで利便性が加速したことは認めます。だが実際には、リアルは伝わっていないのではないでしょうか。いくら高精細な映像が流れても、受け手側が理解することをやめていると感じます。それゆえ戦場の様子を絵空事だと思っていないでしょうか。ゲーム感覚で見ていないでしょうか。

 統治者、インテリと呼ばれる…

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この記事を書いた人
市野塊
科学みらい部兼国際報道部|環境省担当
専門・関心分野
気候変動・環境、医療、テクノロジー