愛知県警岡崎署の留置場で2022年12月に勾留中の男性（当時43）が死亡した事件で、名古屋区検は28日、当時の留置主任官だった元警部（46）=依願退職=を業務上過失致死罪で名古屋簡裁に略式起訴した。特別公務員暴行陵虐や虚偽有印公文書作成の疑いでも書類送検されていたが、いずれも不起訴となった。

　業務上過失致死などの疑いで書類送検されていた当時の他の署員8人も不起訴となった。不起訴の理由は明らかにされていない。

　男性は22年11月25日に公務執行妨害の疑いで岡崎署に逮捕され、勾留中の同年12月4日未明に亡くなった。精神疾患があり、留置場で暴れたためにベルト手錠や捕縄で身体を拘束された。拘束は最大で約110時間続いた。

　検察側によると、元警部は男性が約55時間飲食せず、重度の脱水症で意識障害も生じていたのにこれを看過し、わずかに水を与えるのみで漫然と放置するなどした。この結果、高度脱水による急性腎不全で男性を死亡させたとされる。

　県警は昨年12月に元警部ら当時の署員9人を書類送検。当時の岡崎署長=依願退職=らの刑事責任の追及は見送る一方、署長ら11人の懲戒を含む計27人を処分していた。

　元警部が略式起訴となったことに、男性の父親（72）は取材に「『権力相手だからこれで勘弁してくれ』と息子には報告した。組織ぐるみのはずなのに、元警部一人に罪をなすりつけて終わりのように感じる」と話した。