「不適切にもほどがある!」 一刀両断できない自由と平等のバランス

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神里達博の「月刊安心新聞+」

 先週末、日経平均株価が、34年ぶりに最高値を更新した。このニュースを聞いて、昭和末期の好景気の頃を回想した人も少なくないだろう。

 そんなバブル期前夜の「1986年」と「令和の現代」を、「昭和のおじさん」がタイムマシンで往復しながら暴れ回るという、ちょっと風変わりなテレビドラマが注目を集めている。TBS系列で放送中の、「不適切にもほどがある!」である。

 脚本・宮藤官九郎、主演・阿部サダヲで、NHKの大河ドラマいだてん」のコンビが民放でタッグを組む形だ。先週末、第5話が放送されたところである。

 物語は、昭和の価値観に凝り固まった中学の体育教師で、シングルファーザーでもある小川市郎が、発明されたばかりの「都バス型タイムマシン」に間違って乗り込み、現代にやってくるところから始まる。

 彼は、近所の喫茶店でたまたま居合わせたテレビ局のスタッフなどと知り合いになる。その縁で小川は、さまざまなルールに縛られた令和の会社員たちに勝手なアドバイスをするのだが、それが期せずして、ある種の「気づき」を与えることになり、一躍人気者になっていく。

 そもそもが荒唐無稽な設定なのだが、さらに毎回、肝となるシーンにさしかかると、突然ミュージカル仕立てに切り替わるので、最初はかなり驚かされる。とはいえ、これはたとえばディズニーアニメでもよく使われる手法で、話が説教臭くなるのを避けるための工夫だろう。そこでは宝塚歌劇団劇団四季出身の俳優なども出演し、かなり本格的なショータイムに仕上がっている。

 ともかく、まだ物語は半分程度しか放送されていないので、これからどう展開していくのかは分からないのだが、それを前提に若干、中身についての感想を述べてみたい。

 まず、ディテールは非常に面白い。特に、当時の空気感を覚えている40代後半以上の人たちは、ちりばめられたさまざまな昭和のアイテムによって、笑いとノスタルジアを惹起(じゃっき)させられることだろう。

 一方で、昭和のおじさんが、不適切な発言を繰り返すという物語の基本構造については、賛否が分かれるところだろう。少なくとも小川の発言を通して、コンプライアンス重視の風潮への違和感や、ポリティカル・コレクトネス(PC)へのアイロニーが表現されているのは確かだ。

 このことを考える上で、PC…

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