「道路を走る鉄道車両」見ませんか 山口・下松市で4月に見学会

三沢敦
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 山口県下松市日立製作所笠戸事業所で製造された、台湾向け特急車両の陸上輸送を一般公開するイベント「道路を走る鉄道車両! 見学プロジェクト」(実行委員会主催)が4月27日、市内で開催される。鉄道陸送イベントは過去2回開かれ、いずれも3万人以上が訪れる大盛況だった。11月に迎える市制施行85周年に向けて「ものづくりのまち」をPRする狙いだ。

 見学できるのは、台湾向けの「都市間特急車両EMU3000」の2両。日立製作所が台湾鉄路から600両を受注し、新幹線車両製造で知られる笠戸事業所が製造を担ってきた。年内ですべての出荷を終えるため、地域への感謝を込めてお披露目することになった。

 実行委によると、走行距離は笠戸事業所正門からJR下松駅南口間の往復3・3キロ。午前9時45分からセレモニーがあり、テープカットの後、2両を載せたトレーラーが出発する計画だ。

 第1弾として開催された2017年3月のイベントでは、英国の都市間高速鉄道計画(IEP)向けの陸上輸送を初公開。大型輸送船が着岸する徳山下松港・下松第2公共埠頭(ふとう)までの4キロをトレーラーで運び、沿道を埋めた見物客が鉄道発祥の国へと旅立つ車両を見送った。

 工場から港への陸送は通常、交通量の少ない深夜に行われているが、日時を公表していないにもかかわらず、熱心なファンが全国から来訪する。そこで、日立を中心に鉄道関連企業が集積する「鉄道産業のまち」のPRに活用できると考えた市が笠戸事業所や警察の協力を得て、「見学イベント」として日中の実施に踏み切った。

 第2弾となる19年7月のイベントは、市や下松商工会議所、笠戸事業所などが実行委員会を結成して開催。深刻な駐車場不足や交通渋滞を招くなど安全面に課題を残した1回目の反省を踏まえ、陸送距離を半分の2キロに短縮。国道は経由せず県道だけを通って運ぶルートで英国向け車両を港へ運んだ。

 第3弾となる今回は、本格的な陸上輸送だった過去2回に比べ、「パレード色」が強い。下松第2公共埠頭から積み出していた英国向け車両とは異なり、台湾向けは事業所施設内で直接船積みしているためだ。トレーラーを使った陸上輸送は通常は行われていないという。

 コース周辺にはキッチンカーやキッズ広場、販売ブースを展開するイベントエリアを設置。ものづくり企業フェアを開き、鉄道関連企業が集積するまちの魅力をアピールする考え。8カ所に計1675台収容の駐車場を設ける予定だ。

 実行委の担当者は「下松の技術の結集によってつくられた海外向けの鉄道車両を見てもらうことで、郷土の産業への誇りと愛着を高める機会になれば」と話している。(三沢敦)

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