人を安く使う公務の現場で起きていること 奪われる安心感と人生計画

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聞き手・田中聡子

 将来や老後をどのように生きるか、そのための資金をどうするかなど、人生には計画がつきものです。しかし、不安定な雇用のもとで、今を生きることに精いっぱいな人たちがたくさんいます。非正規で公務に就く人の待遇改善を求めて活動する渡辺百合子さんに話を聞きました。

非正規の収入だけで生きる人たち

 非正規で公務に就く人たちの待遇改善を求めるために、2021年から活動しています。今、問題なのは低賃金に加え、20年度に始まった「任期は1年以内」という会計年度任用職員の制度です。これまでは、真面目に働いていれば「来年度もお願い」と言われていたのに、そうではなくなりました。裕福ではなくても「この暮らしが続く」という最後の安心感をも奪うものです。

 それ以前から、非正規で働く人たちは、将来や老後などを考える余裕がない人が多かった。私は正規の公務員として54歳まで働きました。同じ職場にはもともと学生のアルバイトや近所に住むパートの女性がいました。20年ほど前、ふと、そのどちらでもない、非正規の収入だけで生きる若い女性たちが職場に増えていると気づきました。「公務員は多すぎる」「人件費を削らなければいけない」ということがいつの間にか大前提になり、人件費の安い非正規に置き換えられていたのです。話を聞いてみると、私よりよっぽど働く人が、私の3分の1程度の賃金で働いていました。

集まった悲痛な声

 正規雇用のもとで、2人の子…

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