第1回経済伸び悩みでも株高 企業の利益増えても、株主還元と海外投資へ

有料記事株価バブル超え その実相

編集委員・中川透

 経済成長が伸び悩むなか、史上最高値を更新した日経平均株価。1月は2822円、2月は22日までで2811円も上がった。

 「今の株高は景気の強弱を映しているわけではない。企業や経済をめぐる変化が、海外投資家らの日本再評価につながっている」

 野村証券の森田京平氏はそう指摘する。日本の実質GDP(国内総生産)は消費の伸び悩みもあり、2023年10~12月期まで2四半期続けてマイナス。24年1~3月期もマイナスとの予測がある。ただ、海外投資家の目には、賃上げ・値上げ・利上げという日本が30年余り失っていた変化が芽生えだしたと映る。やっと「普通の国」に戻るとの印象を与え、日本への投資につながっているという。

 株価は1990年代初めのバブル崩壊から急落し、日本経済は「失われた30年」に突入。雇用・設備・債務(借金)の「三つの過剰」に直面し、減らすことが当たり前の企業行動が広がった。安い人件費を求めて中国など海外への生産移転も加速。製造業の海外生産額比率は89年度に約4%だったが、22年度は20%を超えている。

 人口減少で国内市場も縮んだ。住宅着工は22年に86万戸と89年から半減し、新車登録は23年に約400万台と89年から約16%減少。多くの日本企業にとって、海外展開こそが成長の源だった。

 日本再評価への転機となったのは、海外発の動きだった。新型コロナ感染拡大が落ち着き始め、「インフレという名の黒船」(森田氏)が日本を襲い、今の変化につながったという。

 大和証券グループ本社の中田誠司社長は「長年のデフレ経済で、日本企業は利益をいかに確保するかに必死で、リストラやコスト削減など守りの経営をせざるを得なかった。今は前向きな事業再構築や攻めの経営の過程に入った」と話す。

 株式市場で存在感の高い企業の顔ぶれも、バブル経済期と比べて変わった。

 1989年12月末の時価総額上位10社のうち6社が銀行。今のトップはトヨタ自動車で、海外展開を積極的に進めたメーカーが多くを占める。金融機関は三菱UFJフィナンシャル・グループ1社のみとなった。

 上位10社に入るキーエンス東京エレクトロン信越化学工業などはいずれも成長著しい半導体関連の企業。売上高の6~8割ほどが海外向けだ。バブル期も今もトップ10に入るNTTは、グループ約900社の3分の2が海外企業。約34万人のうち海外従業員がほぼ半数を占める。本社は日本だが、生産も販売も海外中心の企業が株式市場全体の値動きを左右する。消費者はかつてのように株高の恩恵を感じにくくなった。

 さらに、賃金上昇がいまの物…

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中川透
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くらしとお金(資産運用、不動産、相続など)