ナワリヌイ氏が届けたユーモアと希望 最後の日々つづった数百の手紙
Inside Aleksei Navalny’s Final Months, in His Own Words
冷たいコンクリートの独房に閉じ込められたロシアの反政権派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は、孤独の中でよく本を読み、知人らとの文通で心を癒やしていた。昨年7月にある人に宛てた手紙には、ロシアの刑務所生活について「ここに来たことがなければ」誰にも理解できないだろう、と記した。「でも、こんな場所にいる必要はないが」と乾いたユーモアも忘れなかった。
手紙の相手はイリア・クラシルシュチク氏。ナワリヌイ氏は8月にも「彼らは、もしも明日(囚人に)キャビアを食べさせろと命じられれば、そうするだろうし、独房で首を絞めろと命じられれば、首を絞めるだろう」と彼に書き送った。
ロシア当局が今年2月16日に発表したナワリヌイ氏の死亡をめぐる状況はもとより、彼が最後の数カ月をどう過ごしていたのかについても多くの謎が残る。遺体の場所すら不明だ。
ナワリヌイ氏の側近たちは、彼の死を受けて、まだほとんど何も語っていない。しかし、ナワリヌイ氏の最後の数カ月については、同氏自身と側近たちの過去の発言や法廷での様子、知人らへのインタビュー、そしてクラシルシュチク氏を含む数人の友人がニューヨーク・タイムズ(NYT)に見せた私信の断片から、その詳細が分かる。
数々の手紙は、プーチン大統領への抗議活動を活気づけたひとりの指導者の野心や決意、好奇心の深さを浮き立たせる。ナワリヌイ氏の支持者たちは、彼が抗議活動のシンボルとして生き続けることを願っている。手紙からは、健全な自我を持ち、自らの行動の正しさに揺るぎない自信を持つ同氏が、いかに外の世界とのつながりを保とうと奮闘していたかも分かる。
過酷な獄中生活で肉体をむしばまれ、しばしば医療や歯科治療を受けることすら許されなかったが、ナワリヌイ氏が明晰(めいせき)な頭脳を失った様子はみじんもなかった。
ナワリヌイ氏の獄中死には謎が残ります。彼は最後の日々をどう過ごしていたのでしょう。独房の様子、読書、そして米大統選――。NYTが記事で紹介する友人らへの手紙からは、孤独の中でも好奇心とユーモアを忘れず生きた姿が浮かび上がります。
1年で44冊の英語の本を読…
朝デジで読むNYタイムズ
ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道や解説記事について、同紙と提携する朝日新聞が厳選して翻訳した記事をお届けします。[もっと見る]