日独GDP逆転「喜べない」 ドイツのエコノミストが嘆くわけとは

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聞き手=寺西和男

 ドイツが2023年の名目国内総生産(GDP)で日本を追い抜き、米国、中国に次いで世界3位となりました。ただ、独キール世界経済研究所の経済予測部門のシュテファン・クーツ部長は「喜べるような話ではない」と言います。10年代半ばに欧州で「一人勝ち」と呼ばれたドイツも、今はロシアによるウクライナ侵攻などを受け「多くの大きな問題を抱えている」と話します。今後のドイツ経済の見通しを聞きました。

 ――日独のGDP逆転をどう受け止めていますか。

 「全く重要だとは受け止めていません。ドイツでも逆転はほとんど話題になっていません。(比較される)名目GDPはドル建てです。日本の名目GDPは日本銀行の金融緩和によって円安になり、為替レートに左右されている面が大きいです。一方、ドイツの名目GDPは高いインフレ率に押し上げられました」

 「ドイツの物価の動きを示す『GDPデフレーター』は22年は5.3%で、23年は6%以上と見込まれます。これはインフレの高止まりを意味します。物価が2年以上にわたってコントロールされていないことを示すものです。GDPで3位になったところで、この国の問題が解決されたということでは一切なく、逆にこの国の問題を示しているとも言えます」

 ――ただ、過去20年をみると、ドイツは物価の影響を除いた実質GDPの成長率で日本を上回ってきました。

 「ドイツの成長の要因は輸出…

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この記事を書いた人
寺西和男
ベルリン支局長
専門・関心分野
欧州の政治経済、金融、格差、ポピュリズム
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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2024年2月18日0時55分 投稿
    【解説】

    ドイツの生産性を支えていたのはエネルギーコストの低さが一因であろう。それが失われてしまった今、その生産性を支えるために政府はこれまでの財政均衡を優先した政策から、財政出動による産業政策を進めようとしている。ドイツのZeitenwendeは安

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