長期停止の敦賀2号機、運転員の3割超が未経験 訓練で技術維持へ

佐藤常敬
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 日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県敦賀市)。原子力規制委員会の審査が続き、運転停止が10年以上に及ぶ中、運転員の3割超が実際に原子炉を稼働させた経験がないという。原電では、未経験者の技術や能力を維持・向上させるため、様々な訓練をしているという。

 「漏れた量によっても(事故の)緊急性が変わってくる。漏洩(ろうえい)量にも注意して」

 原電の訓練施設「敦賀総合研修センター」(敦賀市)。入社30年以上のベテラン運転員、白土孝行マネジャーの指導が入る。

 原子炉の冷却水が流れる配管などの異常を発見するという訓練だ。大小の配管が張り巡らされた部屋では、10~15カ所の機器のトラブル事例を用意。運転員は懐中電灯や聴診棒を使い、冷却水や油の漏れ、圧力計の指示値の異常を調べる。事故の重大度を判断し、時折、白土さんに携帯電話で状況を報告し、対処していた。

 同社は「若手の運転経験がないことを危惧している。実機に近い状態を訓練で再現し、技能の維持に努めたい」と話す。

 センターは2012年に開所。敦賀2号機の中央制御室を模した設備だけでなく、様々なタイプの原発の運転操作を学べる装置や、補修やトラブル対応を学ぶことができる。

 原電によると、敦賀2号機には運転員が合計で54人在籍。そのうち35%の19人が未経験だという。

 同機の運転責任者も務めた白土さんは「起動や停止など原子力発電所の運転の実感がない中で、若手のモチベーションをどう維持するかも悩みの一つだ」と明かす。

 2号機の運転のすべてを体験できる「フルスコープシミュレーター」の訓練は、全運転員が平均で年5回以上、1訓練あたり、2~5日間かけて実施。その他、再稼働した他電力への派遣もするなど、運転技能の維持や継承に取り組む。

 同センターの一ツ矢範生所長は「実機でのトラブル発生時の対応など、長年運転して積み上げてきたベテランのノウハウもある。若手にしっかり伝え、教育していきたい」と話す。

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