日本新聞協会は9日、文化庁が示した「AIと著作権に関する考え方」素案に対する意見を公表した。「著作権法に関して従来より踏み込んだ解釈を明らかにし、権利の適正な保護に向けて一歩前進した」と評価する一方、あいまいさが残るとして、法改正を求めた。

 素案は、生成AI(人工知能)が記事や画像データなどを無断で利用する「ただ乗り」(フリーライド)に懸念の声が上がっていることを受け、著作権法の解釈を明確化したもの。これまで原則として許諾なくできるとされてきたAIによる著作物の学習について、特定の作家の作品を学習して似た作品を生成するなどの目的がある場合は許諾が必要と示した。この点について、新聞協会は意見書で「無秩序な学習利用に歯止めをかける解釈だ」と一定の評価をした。

 また、最近は検索エンジンにAIを組み合わせたサービスが登場。検索すると報道機関の記事を引用する形で文章を生成して表示され、元の記事と多くが一致している例もある。素案では、このサービスについて、元の記事のごく一部を抜粋することを認めた「軽微利用」の範囲を超える場合は、許諾が必要となるとした。

 この点について、協会側は「実際に軽微利用の程度を超えるような事例が多発していることは看過できない。事業者は事態の改善を急がなければならない」と指摘。対価が支払われず、良質な報道コンテンツが提供されなければ、国民の知る権利が阻害されるとして懸念を表明してきたが、改めてAIの開発者やサービス提供者に対策を求めた。

 一方、協会側が求めた法改正に素案が触れなかったことについては、「解釈だけでは権利保護を図るには限界がある。主要国と比べて権利者に不利な規定を放置する合理的な理由もない」として、法改正に向けた検討を急ぐように訴えた。

 素案については、文化庁が12日まで意見公募(パブリックコメント)をしている。