「シマウマ模様」の体で虫のストレス7割減 放牧の黒毛和牛に朗報

坂田達郎
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 黒毛の和牛を放牧する際、体をシマウマのような柄にすると、アブなどの虫を振り払おうとする行動が7割も減った。山形県置賜総合支庁が検証し、結果を明らかにした。牛のストレスが減ることで繁殖力を向上できるとし、えさ代を抑えられる放牧の拡大にいかしたい考えだ。

 放牧は、牛が野草を食べることでえさ代の軽減や省力化につながり、休耕田を活用できるなどの利点がある。一方で、アブやサシバエという吸血昆虫が牛にたかり、ストレスを与えて繁殖力を低下させたり、病気が媒介されたりする危険性があることが課題だった。

 同支庁は愛知県で効果が報告された対策に基づき、2021年から3年間、7~9月に小国町の生産者に協力してもらうなどし、牛が尻尾や頭を振ったり、脚を上げたりして虫を振り払おうとする行動について回数の変化を調べた。

 髪の毛を脱色する際に使われる理容用のブリーチ剤で色を抜いたり、白色のスプレーで塗装したりし、牛に幅3~4センチの線を描いてシマウマ模様にした。その上で、1頭が1分間に虫を振り払おうとする動きを何回するかを数えてみた。

 黒毛のままの牛は16回だった。それに対し、シマウマ模様にした牛は5回にとどまり、7割少ないという結果になった。ブリーチ剤で脱色すると黄色がかった白色になり、1カ月半ほどシマウマ模様が保たれた。スプレーは1週間ほど塗装が持続した。いずれも虫よけ効果が確かめられたという。

 繁殖牛の飼育農家向けのリーフレットに検証結果をまとめた。「半信半疑だったが、虫が来なくて本当に驚いた。しっぽを振る回数が明らかに普通の牛と比べて少なかった。心配していた他の牛からのいじめもなかった」という生産者の声を紹介している。

 県置賜総合支庁農業振興課の担当者は「牛に虫がたかる様子をかわいそうに感じ、放牧をためらう生産者もいる。シマウマ模様の『シマウシ』にすることで、ゆっくりと食事や休息ができ、健康な牛に育つことが期待できる」と話す。(坂田達郎)

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