「政治的自由」は隠れ蓑? 企業団体献金禁止に慎重な首相が多用

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大久保貴裕 聞き手・大久保貴裕

 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件を受け、「政治とカネ」の論戦が続く衆院予算委員会。政治資金制度の見直しについて、岸田文雄首相が憲法の「政治活動の自由」を理由に拒む場面が目立つ。政治家にとって都合のよい盾なのだろうか。

 岸田文雄首相ら全閣僚が出席する衆院予算委員会の基本的質疑が7日、終わった。テーマとなったのは企業・団体献金で、立憲民主党や日本維新の会、共産党が相次いで禁止を求めた。

 立憲の長妻昭政調会長は「(企業からの)献金が多く集まらない分野の政策はほったらかし」と指摘した。共産党の宮本徹氏は、衆院事務局が公開した口述記録のなかで河野洋平元議長が「企業献金が多いから税制をはじめとしていろいろな政策がゆがんでいる。庶民から企業の方へ政策のウェートがかかって」いると指摘していることを取り上げ、廃止を求めた。

 しかし、首相はこう突っぱねた。「企業は政治活動の自由の一環で、政治資金の寄付の自由を有している」

 首相がよりどころとするのが、1970年の最高裁判決だ。自民への政治献金を行った経営陣を株主が訴えた「八幡製鉄政治献金事件」で、会社による献金が適法かどうかが争われた。判決では「会社は政治的行為をなす自由を有する」「政治資金の寄付もまさにその自由の一環」とされた。

 首相はこの判決に触れ「政党が受け取ることが不適切とは考えていない」と主張する。自民の政治資金団体に対する2022年の企業・団体献金は24億円超に上る。

 ただ、この判決は巨額の寄付などによる金権政治や政治腐敗の弊害も指摘し、「対処する方途(方法)は立法政策にまつべき」だと書いている。そのため、長妻氏は「献金を法律で禁止することが憲法違反と言っているわけではない」として法改正を求めた。

 「政策活動費」をめぐっても、首相は「政治活動の自由」を持ち出している。

 政策活動費は、政党から政治…

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    星野典久
    (朝日新聞政治部次長)
    2024年2月8日5時0分 投稿
    【視点】

    とても重要な指摘をしている記事だと思います。首相が国会答弁で多用している「政治活動の自由」。企業・団体献金の廃止や、政策活動費の透明化あるいは廃止の要請をはねかえすための理屈として使われていますが、その主張を憲法学の視点で真っ向から否定して

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