動かない原発、増える「ペーパー運転員」 3~5割が実地経験なし

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佐藤常敬

 東京電力福島第一原発事故後、原発が動いていない電力7社で実地経験のない「ペーパー運転員」が増え続けている。朝日新聞が取材したところ、全運転員の3~5割に上った。各社は早期の原発再稼働をめざしているが、運転員の習熟が進まないまま古い原発を動かすことのリスクを専門家は指摘する。

 原子力規制委員会は福島の事故後、自然災害への備えの強化や過酷事故対策を義務づけた新規制基準を設けた。電力各社はこれまでに16原発27基の審査を申請。このうち北海道、東北、東京、中部、北陸、中国の各電力と日本原子力発電の計7社は審査が長期化して1基も再稼働していない。

 朝日新聞は昨年11月下旬~12月上旬、原子炉の運転やトラブル対応などを担う原発運転員について7社に取材した。その結果、入社後に一度も自社の原発で実地経験がない運転員の割合は33~58%に上った。

「一人前になるまで10年かかる」

 泊原発の全3基が審査中の北…

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2024年2月8日11時8分 投稿
    【視点】

    独自取材なしには明らかにならなかったことだ。メディアの役割と、独自の視点による調査報道の意義を再認識させられる。

    …続きを読む
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    佐倉統
    (実践女子大学教授=科学技術社会論)
    2024年2月8日17時20分 投稿
    【視点】

    台湾の原発事故を題材にしたSF『グラウンド・ゼロ』(伊格言[エゴヤン]著、倉本知明訳、白水社)は、第四原発の建設が政治に翻弄されてあまりに長い年月がかかってしまったため、一貫した工事担当企業が不在になり、製品の規格統一や責任の所在があいまい

    …続きを読む