川辺川への流水型ダムめぐり、国が五木村で説明会

大貫聡子
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 川辺川への流水型ダム整備で環境はどう変わるのか。国土交通省はダム整備で一部が水没予定の熊本県五木村で村民に向けた説明会を開いた。3、4日で計約40人が参加した。

 国は昨年11月、環境影響評価法に基づく準備書に相当する「環境影響評価準備レポート」を公表し、熊本県知事や流域市町村長からの意見を募っている。説明会は木下丈二五木村長の求めで開かれた。

 3日の説明会では、川辺川ダム砂防事務所の斎藤正徳所長が、流水型ダムの構造や、ダム運用後の川辺川の濁りの予測結果などを説明した。

 準備レポートは、生物への影響を指摘する。例えば①工事の騒音などで希少種クマタカの繁殖成功率が低下する②実際に水をためて安全性を確認する試験湛水(たんすい)で流域にある洞窟「九折瀬(つづらせ)洞」の大部分が一定期間冠水することで希少な昆虫などが生息できなくなる――といった可能性だ。

 斎藤所長は、アユや洞窟への影響を踏まえ、水の濁りが少ない冬場に試験湛水を実施することや、十分な環境保全措置をとる考えを示した。

 説明会後は、村の久領地区につくった大型模型実験施設に移動。水没予定地などを60分の1で再現した長さ65メートル、幅50メートルの大型模型に、20年に1度レベルの洪水が起きた場合を想定して水を流し、橋や建物が水につかる様子や、水がひいた後に土砂がどこに堆積(たいせき)するのかなどを見学した。

 これまでの実験では水が引いた後、標高が低い平場に土砂が堆積しやすい傾向が確認されたといい、新たな平場の造成についても検討していくという。

 見学後、木下村長は「洪水対策や環境の問題はこの施設で把握できると思う」と感想を述べ、ダムの受け入れについては「(環境への影響だけでなく)平場の造成や村の振興など総合的に判断したい」と話した。(大貫聡子)

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