撤去直前の朝鮮人追悼碑、1日をドキュメント 献花や記念撮影で列も

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高木智子 吉村駿

 群馬県立公園「群馬の森」(高崎市)にある「記憶 反省 そして友好」と刻んだ朝鮮人犠牲者の追悼碑が29日、県の代執行で撤去される。植民地時代の負の歴史を伝えるとともに、未来にむけて平和と友好を結ぶための碑だった。28日、撤去を惜しむ人々が集い、それぞれの思いを共有した。高木智子、吉村駿)

9:00 追悼碑の周りはひっそり。「記憶 反省 そして友好」と刻まれた追悼碑の銘板前に、折り鶴や花束がおかれていた。ハート形の紙に「話し合い」などのメッセージも。

 イチゴ狩りに行くという20代の女性2人が立ち寄って、手をあわせていた。

10:00 「追悼碑を守る会」のメンバーの男性が碑に到着。「これから裁判と思っていた矢先。甘かったのかも」と話す。明日から碑を見られなくなるので、見納めに訪れたという。太陽が碑に反射して輝く様子をみて、「新たな運動を続けたい」。

10:05 法事に行く途中に立ち寄ったという玉村町の石川真男町長。「植民地支配をしていた加害者が、きちんと記憶していくことが大事。記憶と反省があって、その先に友好があるという、碑の言葉のとおり」「ヘイトの熱風のなかで碑が撤去されるのか。だとしても、歴史を変えることはできない」

10:30 報道で撤去されると知った近隣の男性(69)は碑に手をあわせた。碑の存在を知っていたが、実際に足を運んだのは初めて。「碑を残せるものなら、残した方がいい。友好の証しだし、結構、朝鮮の労働者の方が亡くなっていますよね」

10:50 碑を訪れた女性が「よく県も壊す気になるわね。誰にどれだけの迷惑をかけたのかねえ」と語る。

 近くにいた守る会のメンバー神垣ひろしさんは、病気で発声が難しいが、「悔しい。知事は何を考えているのか」と器具をつかって声を振り絞った。

11:00 追悼碑を守る会のメンバーが碑の前で記念撮影をしたり、碑への思いを静かに語りあったりした。

 代表委員の川口正昭さん(64)は「まだ実感はないけれど、本当に碑に申し訳ない。また記憶して反省することが増えたなあ」。宮川邦雄代表委員は「群馬の良心のシンボルでもある追悼碑が撤去されるのは断腸の思い。素晴らしい碑だったんだとつくづく思う」。

11:30 碑の前で、前橋市の代田清さん(83)が「アリラン」をハーモニカで演奏。碑を建てる会の時代から関わる1人だった。「悔しい。撤去されたとしても、気持ちまで撤去される訳じゃない」。その後、「ふるさと」を伴奏し、居合わせた人々と合唱した。

11:40 植民地支配を正当化する話を大声でする男性が現れる。守る会のメンバーが「植民地支配したからといって、何をしていいわけじゃない」と抗議。その後、警察官や公園管理の職員が男性に対し「離れましょう」と言う。

 13:00 サイクリングに来た男性も碑の前に。近くに住んでいるため、「群馬の森」には何度も来たことがあるが、碑を見るのは初めて。報道で気になって訪れ、スマホで撮影した。「撤去には反対ですね」と言葉少なに語った。

13:10 高崎市内の女性(…

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