なぜ女性は昇進をためらう? 横浜市が始めた「背中を押す」研修とは

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小林直子
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 女性の管理職が増えない――。職員4万人を擁する横浜市役所がそんな悩みに直面している。

 管理職への登竜門となる係長昇任試験に挑戦する女性の割合は、男性の半分にとどまるという。

 女性管理職が増えないのは、民間企業にも通じる課題だ。この課題を打破するために、市が新たに始めた取り組みに密着した。

 昨年12月。市庁舎(中区)31階にあるレセプションルームに副市長ら市の幹部や管理職が集まった。

 28~33歳の女性職員10人が参加する研修「Next Leadership Academy」の成果発表会だ。

 この日の発表会では、「職員が生き生きと働ける横浜市に向けて」というテーマで、グループごとに議論してきた結果を説明した。

 あるグループは「ワークとライフを相乗する存在とし、相互を充実させる『ワーク・ライフ・インテグレーション(統合)』という働き方を目指したい」などとプレゼンした。

 研修は、今年度から始まった。女性に限った研修は市役所では珍しいという。

 それでも導入された背景には、女性職員の「ためらい」がある。

「家庭も仕事も中途半端な気がする」

 市では女性の管理職(課長級以上)の割合を2026年4月までに30%以上にするという目標を掲げているが、現状は19・5%(23年4月)にとどまる。内閣府によると、全国の市区町村の平均は17・3%(22年4月)で、わずかに上回る程度だ。

 管理職になる前提となる係長昇任試験の受験率は、受験資格のある職員のうち、男性は51・6%なのに、女性は21・5%(23年度)。

 なぜ、女性の受験率が低いのか。職員へのアンケートの分析を通じて人事課が出した結論は、「責任が重くなることへのためらいが女性の方が顕著だ」というものだ。

 アンケートで「係長昇任試験を受験しない・躊躇(ちゅうちょ)する理由」をたずねると、「責任が重くなる」「職場・係のマネジメントに自信がない」といった回答が男性に比べて多かった。特に30代前半まででその傾向が強かったという。

 研修に参加した女性職員(30)は3歳と4歳の子どもを育てている。子どもが体調不良になると、まず頭に浮かぶのは仕事のこと。なのに、職場では育児で急な欠勤があることに引け目を感じ、積極的になれなかった。「毎日いっぱいいっぱいで、家庭も仕事も中途半端な気がしていた」

記事後半には、「かつて係長昇任試験を受けるのをためらった」という女性副市長のインタビューも。

アンケートからみえた、有効なアプローチは

 一方で、人事課がアンケート…

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この記事を書いた人
小林直子
東京社会部|教育担当
専門・関心分野
子育て・教育、スポーツ
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    仲岡しゅん
    (弁護士)
    2024年1月30日15時0分 投稿
    【視点】

    講演などで各地の中学校や高校に行く機会が多いのですが、大抵どこの学校でも先生たちから言われるのは、「うちの学校は女子のほうが元気なんです」という言葉。 ところが、なぜか社会人になると、「ためらい」や「自信のなさ」を感じてしまう女性の多

    …続きを読む
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    能條桃子
    (NOYOUTHNOJAPAN代表)
    2024年1月31日16時31分 投稿
    【視点】

    非常に重要な研修の取り組みだと思います。 私は地方議会における女性議員の少なさに問題意識を持ち、FIFTYS PROJECTという活動をやっていますが、やりながら分かってきたことは地方議員に女性が増えた先に行政側にも女性が増えないと、なか

    …続きを読む