同性愛はあかんこと? あの授業に導かれて 「私すごく今幸せです」

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花房吾早子

 大学受験に向け血眼な子、冬休みが楽しみな子……。1997年11月末、同志社高校(京都市)3年A組の教室は、いつも通りざわざわしていた。

 キリスト教学を担当する原田博行先生が、普段と変わらぬ調子で切り出した。

 「今日は同性愛についての授業をします」

 同性愛を公表している歌手の笹野みちるさんのことを話し始めた。大学生の頃からの親友だという。

 授業を聞いていた井上ひとみさんは、同じクラスに好きな女の子がいた。

 幼い頃から、母に連れられて教会に通った。同志社中に入学すると、朝の礼拝で聖書の一節を読む。「同性愛はあかんことなんや」。そう思わされるような話ばかりだった。

 でも、先生は言った。

 「僕はクリスチャンとして、同性愛を否定しない。その人がその人らしく生きることを応援するのがキリスト教やと思う」

 先生になら話してもいいかな。心が揺れ始めた。

誰にも言わないまま、迎えた卒業

 授業の終盤、先生が問いかけた。

 「同性間の恋愛は成り立つと…

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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2024年2月19日6時51分 投稿
    【視点】

    この物語は朝日新聞の紙面でも2月18日付朝刊に掲載されました。春の足音が近づく、冬の日曜日の晴れた朝。温かいコーヒーとともに読みふけって、澄んだ気持ちで一日を過ごせた気がしました。 26年の月日を経て、同性愛の受け止め方は「即、娘と縁

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男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]