「哀れなるものたち」 映画評論家・秦早穂子 蘇った女が選んだ道は

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秦早穂子・映画評論家
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【評・映画

 19世紀末。紺青色の裳裾(もすそ)を翻し、橋の上から黒髪の若い女が身投げした――。

 アラスター・グレイ(1934~2019)、スコットランドの小説家・劇作家・脚本家・画家で、本作の原作者。監督ヨルゴス・ランティモス、73年ギリシャ生まれ。「女王陛下のお気に入り」はヴェネチア映画祭で銀獅子賞受賞。23年、同映画祭で物議を醸しながら、金獅子賞を獲得したのが本作だ。

 天才的外科医のゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は、貧しい出の弟子、マックス・マッキャンドレス(ラミー・ユセフ)に、肉体は大人、精神は子供のベラ(エマ・ストーン)の成長を記録するように命じる。一度は死んだ黒髪の女を蘇(よみがえ)らせた外科医は、ベラに惚(ほ)れた弟子の心情、何より彼自身の愛情と執着から、2人の結婚を計画。弁護士ダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ)に結婚契約書の作成を依頼。女たらしのダンカンは、ベラを誘い、世界旅行へ発つ。

 光と色に溢(あふ)れるリス…

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