NHKの地震報道に抜け落ちていたもの 「命を守る放送」だったのか
記者コラム「多事奏論」 論説委員・田玉恵美
正月の2日にラジオをつけて驚いた。能登で大地震が起きた翌朝なのに、NHKのラジオ第1(AM)が箱根駅伝を中継している。石川県内でも同様のようだ。
ずっと地震のニュースをやっていた総合テレビでも、この日の夜から少しずつ通常の番組が戻り始めた。
翌3日は箱根駅伝の中継がFMに移り、ラジオ第1はニュースに切り替わったが、テレビでは昼間からドラマやお笑い番組が比較的長い時間、流れている。
被災地域の全体状況はまだよくわかっていないが、発表される死者の数は増え続けていて、かなりの被害がありそうだった。NHKは報道機関として唯一、災害対策基本法で指定公共機関に定められ、他のメディアにない責任も負っている。なのに、やけにあっさりしていないか。
NHKの人たちに聞くと、「その後もニュース枠は拡大しているし、単に長くやればいいというものではない」「箱根の合間に地震の情報もかなり伝えた」「ふつうの番組を見たい視聴者もいる」といった声が返ってくる。
実際、災害時にニュースを長くやっていると、被災地から遠い地域に住む視聴者などから必ず苦情が寄せられるのだという。
そう言われて調べてみると、たしかに熊本地震のときもテレビは似たような編成で、本震の翌日には競馬中継や大河ドラマの放送が再開していた。今回が特別に手薄というわけではなさそうだ。
でも、どうも何かが変だった気がする。序盤の放送を見直してみて、違和感の正体に気づいた。物足りなく感じたのは放送時間の量というより、放送そのものの中身だった。
逃げ遅れの通報が多く消防の…
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- 【視点】
すでに各所で報じられているように、NHKは東日本大震災以後、少なくともアナウンスメントの在り方を大きく改善するなど試行錯誤を進めている。同時に偽情報対策も事業の中核に据えようとしている。他方で新聞社はどうか。特に全国紙は朝日新聞も含めて(読
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