ナスカの地上絵研究、ペルー政府動かす本気度 世界最前線の山形大
いったい何のために描かれたのか――。
世界の関心を集め、1世紀にわたり各国の研究者が調査してきた南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」の制作目的が解き明かされようとしている。
首都リマから南に約400キロ。
日本からは飛行機とバスを乗り継ぎ、2日がかりで砂漠地帯のナスカ台地に着く。周囲の川沿いに人々が暮らし、トウモロコシやジャガイモ、カボチャなどが栽培されてきた。
東西約20キロ、南北約15キロの広大な台地に、約2千年前に描かれた地上絵。
その研究で世界の最前線を走るのが山形大学だ。
研究20年、計1千点が見つかる可能性
2004年からナスカ台地の地上絵の研究を始め、世界で唯一、ペルー政府の許可を受け、学術調査を続けている。
研究を始めて今年で20年の節目を迎え、新たに多くの「地上絵発見」の知らせが届きそうだ。
地上絵の調査は1920年代、米国の人類学者やペルーの考古学者らが始めた。
94年には世界遺産に登録されたが、調査されてきた範囲はナスカ台地のごく一部だった。
山形大が研究に入る前に確認されていた具象的な地上絵は、有名なハチドリやクジラ、サルなど32点。一方、同大がこの20年間に新たに見つけた数は10倍超の350点を上回る。
「今後の数年間でさらに集中的に調べ、計1千点ほどの具象的な地上絵が見つかるとみています」
研究を中心になって進める山形大の坂井正人教授(61)=文化人類学・アンデス考古学=は話す。
黄金の副葬品などが発掘されて話題になったペルーのクントゥル・ワシ遺跡の調査団に参加したり、世界遺産のチャンチャン遺跡を研究したりしてきた。
地上絵にも関心を抱き、東京大大学院生のとき、ペルーで博物館を運営する日系人を通して、ナスカに住み、地上絵研究に生涯を捧げたドイツ人女性、マリア・ライヘ氏(1903~1998)と会うことができた。
94年、ライヘ氏の助手の案内で約1カ月間、ナスカ台地を予備調査した。
「ナスカ台地はあまりにも広い。まずは分布図をつくろう」
人工衛星画像を見つめる日々
山形大が文化人類学の教員を公募したのに応じ、96年、助教授として着任。地上絵についてもコツコツと調べていた。
転機は山形大が取り組むプロジェクトに認められ、人工衛星画像を入手できたことだった。
2004年、同大の環境地理学、認知心理学、情報科学の研究者も加わり、正式に研究が始まった。
「最初の5年間は、人工衛星画像から地上絵を探すという気が遠くなるような作業だった」
部屋にパソコンを並べ、学生5、6人が画像を見つめ、図面化していった。
まず着目したのは、直線の地上絵だった。
放射状に広がるなど数が最も多く、これまでに1300本超が確認されている。
あるとき、1人の学生が声をあげた。
「先生、変な絵があります」
調査が進んでいないナスカ台…
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