木を多用した車内、生演奏も ロイヤルエクスプレスが四国に

福家司
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 東急の豪華観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」が26日から四国・瀬戸内エリアで初めて運行するのに先立ち、報道機関を対象にした体験乗車会が21日、愛媛県内のJR予讃線松山―伊予西条―今治間であり、関係者が運行開始への感慨や意気込みを語った。運行は3月までで、全席が完売している。

 濃紺の列車が電気機関車にひかれて松山駅に姿を現した。乗り込むと、車内は展望車やダイニングカー、ライブラリーなど用途に応じて組子細工やアンティークな家具など木を多用した、鉄道車両とは思えない重厚な、あるいは遊び心にあふれた雰囲気に息をのんだ。JR九州の豪華列車「ななつ星in九州」などのデザインで知られる水戸岡鋭治さんのデザインだ。

 電車だが、予讃線のトンネル断面が小さいため、電気機関車が牽引(けんいん)し、白い電源車1両を組み込んで客車として走る。

 発車の際には「ピー」という汽笛の合図と、軽い引き出しのショックがあり、この区間でかつて乗った夜行快速「ムーンライト松山」などを懐かしく思い出した。

 折り返しの伊予西条駅では、機関車を付け替える客車列車独特の作業「機回し」も披露された。

 この日は松山駅を出発後、伊予灘を望み、海岸線に沿って走る風光明媚(めいび)な区間にさしかかった。車内でサービスに当たるクルーの一人は「島が遠くに見え、(普段走る)太平洋に面した伊豆の海とは全く雰囲気が違う」。

 車内ではこの運行のために作られたオリジナル曲が演奏され、列車の走行音を思わせたピアノの軽やかなリズムに合わせてバイオリンの優雅な音色が流れた。運行中も同乗し演奏するというバイオリン奏者、音楽家大迫淳英さん(50)は「オリジナル曲は、実際に四国や瀬戸内を訪れ、瀬戸内の豊かさや静かさをイメージしてプロデュースした。音楽は旅を感動に変えることができる。お客様と旅を共にしながら、お客様の思い出の曲もリクエストに応じて演奏したい」と話した。

 愛媛産の魚を使ったお造りや握りずしも提供された。「キッチンカー」ですしを握ったのは松山市のすし店主、猪野祐介さん(39)。「普段と違い、揺れる車内で包丁を使うのはどきっとすることもあった。タイやアオリイカ、アジなど魚のおいしさを通して、全国的にも愛媛の食材が高いレベルにあることを伝えたい」。

 東急の松田高広・クルーズトレイン推進グループ統括部長は「地域を元気にしたいというのがわれわれの願い。北海道で運行しているノウハウを生かし、JR西日本、JR貨物などを含め、今までにない多くの会社で協力をして(四国での運行を)進めてきた。1年がかりでこのエリアに足を運んで取材し、コースやサービスを考えた。四国は歴史があり、日本の原風景というイメージを伝えるため、車内では菊間瓦(愛媛)や和三盆(香川)の紹介も予定している」と明かした。

 ツアーは3月1日までの6回、岡山を出発し、琴平、松山、瀬戸内しまなみ海道などをめぐる3泊4日。1人約100万円(2人で申し込む場合)と高額ながら、定員の2倍弱の応募があったという。リピーター率が約5割と高い印象といい、参加者は70代が中心という。(福家司)

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