京葉線のダイヤ改定、沿線地域の反発を見誤ったJR側の背景とは?
【千葉】JR京葉線の快速縮小のダイヤ改定をめぐっては、JRが改定公表後の見直しという異例の事態に追い込まれた。「考えが及ばない点があった」と沿線地域の反応を見誤ったことを認めたが、そもそもJRにも改定に踏み切る理由があったはず。今回の騒動に至るJR側の背景にはどのようなものがあったのだろうか。
JRでは通勤時間帯の快速を各駅停車に置き換える狙いとして、3点挙げていた。一つが「混雑の平準化」だ。現状、蘇我駅と新木場駅(東京都江東区)をノンストップで結ぶ通勤快速の利用者は、各駅停車の約7割にとどまる。二つ目が「各駅停車の所要時間の短縮化」。ダイヤ改定によって、東京―蘇我間で最大で7分、平均でも2分短くなるとしていた。
そして三つ目が、快速が停車しなかった駅の利便性を高めて、沿線各駅の均衡発展を図ること。例えば、昨年3月に幕張新都心に開業した幕張豊砂駅。それまで新都心には海浜幕張駅しかなく、「地域回遊性が乏しい」として県と千葉市がJRに請願して実現した、千葉支社管内では25年ぶりとなる新駅だ。
ただ、利用は順調とは言いがたい。国内最大級のイオンモール幕張新都心に隣接し、JRによるホテル開業も予定されているが、駅前は閑散とする。駅北側への連絡通路は費用面から建設されなかった。今回の改定で停車本数は平日1日に30本増となることで、にぎわいに期待する声もある。
一方で各駅停車化が沿線の発展に有効という明確なデータはない。実際、京葉線のような40キロ以上ある都市圏の通勤電車で「(快速と各駅の)緩急を選択できない路線は、私鉄を含めてない」(鉄道ジャーナリストの梅原淳さん)。
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そもそも京葉線の利便性は高いのだろうか。
運輸総合研究所の2020年版年報では、京葉線の年間輸送人員は2億5862万人。並行路線数の違いなど単純比較はできないが、大阪と京都の両市内を結ぶ同規模の阪急京都本線(2億2415万人)の平日1日上りの運行本数が220本なのに対し、京葉線は128本。終日混雑率も阪急の44%に対し、70%と歴然とした差がある。
今回のダイヤ改定では、蘇我駅を午前7時44分に発車する通勤快速が廃止される代わりに、同駅39分発の「特急わかしお4号」が新設される。だが、運賃のほかに特急料金が520円かかるうえ、現在42分で結ばれている蘇我―東京間は46分に増加する。
JRは今回の改定について「コスト効果を狙ったものではない」(土沢壇支社長)とする。だが、各駅停車化の背景として、経営環境を指摘する声もある。コロナ禍が直撃したJR東日本の21年3月期決算は、売上高が前年より4割減。純損益では国内の上場企業で最大となる5779億円の赤字を計上した。
その後も鉄道部門は厳しい収支が続く。18年に公表した中長期の経営予測では、40年の管内人口は15年比で1割減と見込んでいた。ただ、コロナ禍以降それを上回るペースで移動需要は減っており、効率化は避けられない喫緊の経営課題となっている。
JRでは早朝の上り快速2本に限り運行を維持する修正をし、「(今後も)柔軟に検討していきたい」(土沢支社長)とした。千葉市側では「東京近郊の利用者の優遇に偏っていて、遠距離利用者にとってはサービスの格下げ以外の何ものでもない」(幹部)と、まだ根本的な解決にはなっていないと反発姿勢は変えていない。