赤字路線「を」ではなく「で」どうする 2カ月1回、住民らの夜集会

勝部真一
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 深刻な赤字が続くJR紀勢線の未来を考えよう――。紀南地域の市町村や商工団体、和歌山大学などでつくる「きのくに活性化センター」が、住民らの対話集会「きのくに線deナイト」を企画した。2カ月に1回程度、沿線各地で開催していく予定。第1回が12日夜、すさみ町で開かれ、約30人が意見を交わした。

 紀勢線のうち和歌山から新宮までの区間は「きのくに線」として親しまれている。JR西日本が昨年11月に公表したローカル線の2020~22年度平均の収支によると新宮―白浜間は28・5億円と、山陰線出雲市―益田間(いずれも島根県)の33・1億円に続いて2番目に赤字額が大きかった。

 22年度の輸送密度(1キロ当たりの1日平均利用者数)は793人。和歌山県内の駅を通る路線のうち利用の多い阪和線の日根野―天王寺(いずれも大阪府)間は約13万6千人、白浜―和歌山間でも6797人だった。

 すさみ町のホステル「あなかしこ」で開かれた第1回には、地元住民や観光、行政関係者らが集まり、岩田勉町長も参加した。

 最初に「ジェイアール西日本コンサルタンツ」の福山和紀さんが、紀勢線の現状や無人駅を活用したまちの拠点作りの実例などを話した。また、福山さんがJR和歌山支社時代に取り組んだ「サイクルトレイン」やキャラクター「鉄道むすめ(黒潮しらら)」の企画なども紹介した。

 このあと参加者らは三つのグループに分かれ、「紀勢線についてどう思っているか」を出し合い、紀勢線「を」どうするかではなく、紀勢線「で」どうするかを話し合った。

 「海岸線の風景がすばらしい」「ゆっくり、のんびりできる」「観光との親和性が高い」という意見の一方、「不便」「活気がない」「学生と高齢者しか利用していない」という声もあった。その上で「県民みんなが1年に1回でも乗ったら状況がかわるかも」。「電車に乗っている時間の有効活用」「沿線に物語を設ける」などの案も出された。

 福山さんは「いろいろな立場の人が集まって、地域のことを考えることは意義深い」と話した。事務局担当の西川一弘・和歌山大教授は「世代によっても感覚が違う。アンケートなどではなく、対話形式で話をすると、本心がでるのでよかった」と話す。3月にも第2回を開きたいという。(勝部真一)

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