万城目学さん直木賞「スライダーばかり投げてたのに取れてびっくり」

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野波健祐

 第170回直木賞の選考会が17日に開かれ、万城目学さん(47)の「八月の御所グラウンド」(文芸春秋)と河崎秋子さん(44)の「ともぐい」(新潮社)に決まった。万城目さんの記者会見の一問一答は次の通り。

――受賞されて今のお気持ちを

 ずっと取ることはないなと思ってたんで、この1カ月くらいも全然緊張せずに、他人事のように暮らしていまして、今日も、(発表が)あるんかみたいな感じで過ごしてましたんで、連絡が来て「受賞です」と言われたときはびっくりして、本当にこんなことあるのかと感じました。

――初候補から16年半、長かったのか、あっという間だったのか

 あっという間はないな、と思いますけども、直木賞というのは隣にいる賞ではなくて、たまに隣に来てもずっと目線を合わさずに別れていくというのが続いていたので、今回も目線を合わさずにまたすれ違うのかなと思っていたんですけど、16年たつと、多生の袖を触れあったなという感じです。

――今回は京都が舞台で、デビュー作「鴨川ホルモー」も京都が舞台でした。京都の風土が創作に与える影響はありますか

 最初に「京都にありがとう」と言おうと思っていたんですが、すっかり忘れていました。京都を舞台に書かなかったら小説家にもならなかった。久しぶりに京都を舞台に書いて賞をもらったので、本当に京都におんぶにだっこの作家だなと思います。

――16年ぶりに京都を舞台に書いてみようと思ったのはなぜか

 デビューの前、京都を書いたら次に奈良を書いて、大阪を書いてということを適当に考えていまして、デビューできたのでその通りにやってまして、それからどうしようかと思って、滋賀を書いて、どんどんどんどん京都から離れていって、書きたいものをつぶしていくうちに、また京都を書いてもいいかなという思いになるのに16年かかった。自然な感じでした。

――林真理子選考委員の選評のなかで、「日常にふわっと入り込む非日常が巧み」という発言がありました。日常に非日常が入り込んでくるのが「万城目ワールド」です。なぜ非日常が入り込むのか

 そこは癖といいますか、勝手…

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    大村美香
    (朝日新聞記者=食と農)
    2024年1月18日9時49分 投稿
    【視点】

    万城目作品を数冊しか読んでいない読者ですが、作品世界と相通じる人柄を感じさせる記者会見の模様を面白く読みました。選考会当日の過ごし方を語った最後の部分が特に。森見さんにバトンは渡るのでしょうか。

    …続きを読む