直木賞に河崎秋子さんと万城目学さん 芥川賞に九段理江さん

 第170回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、東京都内で開かれ、芥川賞は九段理江さん(33)の「東京都同情塔」(新潮12月号)に、直木賞は河﨑秋子さん(44)の「ともぐい」(新潮社)と、万城目学さん(47)の「八月の御所グラウンド」(文芸春秋)に決まった。賞金は各100万円。贈呈式は2月下旬に都内で開かれる。

 九段さんは1990年埼玉県生まれ、千葉県在住。2021年に「悪い音楽」で文学界新人賞を受賞し、デビュー。23年に「Schoolgirl」で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「しをかくうま」で野間文芸新人賞を受けた。芥川賞への候補入りは2度目だった。

 受賞作は、ザハ・ハディド設計による新国立競技場が実現した近未来の東京が舞台。新たに新宿御苑に建設されることになった塔の様相が、設計した建築家と彼女の伝記を書こうとする青年の視点でつづられる。

 芥川賞の選考委員を代表して、吉田修一さんは「エンターテインメント性が高く、読み方が議論になる面白い作品」と評価。九段さんは「ぐらぐらとしていて、いまにも崩壊してしまいそうな小説。不安定な部分を魅力と評価してくださってうれしい」と語った。

 直木賞は2作受賞となった。河﨑さんは79年、北海道生まれ。酪農を営む実家で従業員と羊飼いをしながら小説執筆を始め、15年に単行本デビューした。直木賞の候補は2度目だった。

 受賞作では、明治期の北海道を舞台に、世間と交わらずに生きる猟師とクマとの闘いを描いた。選考委員の林真理子さんは「自然描写がすばらしい。文章力と迫力で圧倒された」と述べた。河﨑さんは「喜びの渦に巻き込まれて、地に足が着いていないような状況です」と話した。

 万城目さんは76年、大阪市生まれ。京都大法学部卒業後に勤めていた繊維メーカーを辞め、06年に作家デビュー。07年の「鹿男あをによし」以降、6度目の候補で直木賞を射止めた。

 受賞作は、京都で怠惰な生活を送る大学生を主人公に、死者と生者が淡く交わる物語。「日常のなかに異空間が入り込む筆致がすごい」と評された。万城目さんは「取ることはないと思って、他人事のように暮らしていた。本当にびっくりしました」と喜んだ…

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