犯罪集団が海外に拠点、闇バイトで人集め 「ルフィ」事件の課題とは

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記者解説 編集委員・吉田伸八、社会部・田内康介

 フィリピンの首都マニラの郊外にある入管施設「ビクタン収容所」から、「ルフィ」や「キム」などと名乗る男らが国内の実行役に指示していたとされる広域強盗事件の本格的な捜査は、1年近くに及んだ。

 東京、千葉、京都、広島、山口の5都府県で2022~23年に起きた八つの強盗を指示したとして、警視庁は23年6~12月、特殊詐欺グループ幹部の今村磨人被告(39)を順次逮捕。そのうち3~7事件の指示役として、幹部の渡辺優樹(39)、藤田聖也(39)、小島智信(46)の3被告も逮捕し、いずれも起訴にこぎつけた。

 一連の捜査を通じて、SNSで実行役を集め、事件ごとにメンバーを入れ替え、アメーバのように形を変えて犯行を繰り返していた姿が明らかになった。「匿名・流動型犯罪グループ」と警察が呼ぶ新たな犯罪集団の一つだ。

 ルフィ事件が注目されたのは23年1月、東京都狛江市の住宅で女性(当時90)が亡くなった強盗致死事件だった。直後に約2700キロ離れたフィリピンの収容所にいるグループ幹部らの関与の疑いが浮上。20歳前後の若者らが指示を受け、人命を奪うまでに至った事件は社会に衝撃を与えた。

 事件の特徴の一つが「闇バイト」だ。警視庁によると、一連の事件では実行役などとして18~64歳の男女44人が逮捕され、うち7割超が20代以下。その多くが、高額な日当などをうたいSNSで募る闇バイトに応じ、各地から集まっていた。

 指示役に実家の住所などを把握され、脅され抜け出せなかったケースもあった。報酬を全く得られなかった実行役も多く、警視庁幹部は「切り捨てられる駒」だと指摘する。

ポイント

 「ルフィ」などと名乗る犯罪グループ幹部らが摘発された捜査は区切りを迎えた。「闇バイト」や匿名性の高い通信手段への対応、海外当局との連携などが課題に。これまでの暴力団とは違う、新たな形態の犯罪集団の取り締まりが警察に迫られる。

 闇バイトに応募する若者は後…

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