「英史上最大の冤罪事件」に再び集まる注目 富士通の責任を問う声も

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ロンドン=藤原学思

 英国の郵便局を舞台にした英史上最大規模の冤罪(えんざい)事件が、テレビドラマ化を機に再び注目を集めている。事件の背景にある会計システムを提供した富士通への批判も日増しに高まり、同社が議会で証言を求められる事態に発展した。

 英議会の報告書や郵便当局によると、事件の始まりは1999年。各地の郵便局に富士通の会計システム「ホライゾン」が導入された後、郵便局側のシステム上の残高が、実際にある現金よりも多く表示される不具合が生じた。

 英国ではほとんどの郵便局が当局から独立し、個人で運営されている。生活に直結する地域の中心的存在に位置づけられ、貯蓄先としての信頼が厚い。

訴追される郵便局長ら

 当初は、ホライゾンの不具合によって残高差異が生じているとの認識は広がっておらず、各郵便局の局長らは、差額を自分たちで穴埋めした。その結果、破産するケースなどが続発。2015年までに、736人が不正会計や窃盗、詐欺の罪で当局に訴追された。

 英メディアによると、一連の事件に関連し、少なくとも4人が自ら命を絶った。有罪判決が取り消されたのは93人にとどまり、補償も十分でないという。

 富士通のシステムの不具合は…

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2024年1月11日2時8分 投稿
    【視点】

    この事件は確かに富士通が納入した機械の問題だったが、富士通に対する批判よりも、それまで冤罪を認めてこなかった政府や郵便局などに対する批判も強く、この事件に関係する組織や企業がみんな批判の対象になっているという印象。興味深いのは、この事件に光

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    小林恭子
    (在英ジャーナリスト)
    2024年1月11日16時28分 投稿
    【視点】

    在英の筆者は、2年ほど前から英メディアの報道を通じて郵便局冤罪事件の存在を知りました。 今年になって英民放ITVで冤罪事件のドラマが放映されると、急に大きな注目を集めるようになりました。 これまでにも雑誌や新聞、そしてBBCの記

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